うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

朝鮮戦争の経緯を読んで、何かに似ていると思う&休戦七十年なので、積読していた「火山島」を読み始めた。

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読売新聞の「朝鮮戦争休戦七十年の特集」の番外編として、四人の識者が今後の朝鮮半島について見解を寄せている。

「現在の北朝鮮の体制は、そろそろ崩壊するのではないか」

「韓国の尹政権は北朝鮮との対話の窓口を閉ざしている。それは危うい」

など色々な意見が載っている。

その中で、北朝鮮の元外交官で現在は脱北して韓国の国会議員になっている太永浩氏が語る、「朝鮮戦争の経緯」が目を引いた。

韓国では、開戦当初は北朝鮮が優勢で、韓国はなすすべもなく釜山近くまで退却したと捉えられているが、金日成にしてみれば誤算続きだった。

金日成と後ろ盾だったソ連のスターリンは一週間以内に戦争を終わらせる予定だった。

奇襲攻撃でソウルを包囲して陥落させれば、朝鮮半島の支配者になると考えていた。(略)

戦争になれば各地に潜んだ共産ゲリラが蜂起するとの主張があったが、実際にはなかった。指揮系統が徹底されず、韓国内部の情報も不正確だった。

(引用元:「朝鮮戦争休戦70年」読売新聞2023年8月2日(水)朝刊8面・太永浩/太字は引用者)

「ウクライナ侵攻」とほぼ同じ状況では、と思ったのだ。

強い権力を握った人間は、自分の願望が事実だと思い込んで行動してしまうようになるんだな、とこれを読んで思った。

プーチンの場合は成功体験もあったからなのだろうが、それにしても現在の戦況の泥沼化を見ると、うまくいかなかったときの次善の策を何も考えていなかったとしか思えない。

 

これらを教訓として、金日成は最高指導者に権限を集中させる「唯一思想体系」を構築した。

逆らう人間はすべて粛清され、金日成に連なる白頭山の血統を絶対視する世襲の王統になった。

(引用元:「朝鮮戦争休戦70年」読売新聞2023年8月2日(水)朝刊8面・太永浩/太字は引用者)

読んでいてよくわからなかったが、「これらを教訓とし」たら、むしろ「自分を唯一無二の存在にしてしまったから自分の見解に沿うような情報しか集まらなくなり、状況を多角的に検討できなくなっていた。正確な情報を集めそれがすばやく上がって来るように自分の下の指揮系統を整えよう」と思うのではないか。

それを実行するかどうかは、政治的判断も入るだろうから別にしても、少なくとも「自分にさらに権力を集中させて、絶対性を強固にしよう」という方向にはいかないのではと思ってしまうが……いってしまうんだな。

 

文化大革命の本だったと思うが、

「絶対的な権力者は、敵よりも、自分と同じ考えをより強く極端に主張する味方を恐れる。何故なら、より極端な主張のほうが支持されることがわかっているからだ。だから、権力の座にいるために常に最も強硬に主張をし続けなければならない」

という話を読んだことがある。

「極端でわかりやすい主張を強く繰り返す主張者に人は惹きつけられる。そのため権力者はその思想を信じているからではなく、『権力闘争のための方法論』として主張をどんどん尖鋭化させていく」

主張している人間は無法や矛盾や暴論であることがわかっていないわけではない。

それは百も承知していて「その主張をすること」自体を目的としている。

対立者にとっては筋が通っていない、信じられないほどの暴論であっても、同じ主張の人間の間ではそれが尖鋭化された暴論であるほど支持されるのだ。

この現象については、ネットでもよく指摘される。

こういう人が支持される構図を見かけると、絶対的な権力者を生み出した国や組織のことを笑えないなと思う。

 

「朝鮮戦争休戦70年」ということで、積読していた「火山島」を読もうと思い立った。

ハードカバーの分厚い本で全7巻、400字詰め原稿用紙一万枚を超える大作である。

買ったはいいが複雑すぎて訳がわからなかったからどうしようと思っていたけれど、読み始めたら意外にも面白くスルスル読める。

歴史の資料と紙一重の堅苦しい話かと思いきや、いい意味でちゃんと「お話」になっている。

朝鮮半島の戦後の歴史については詳しいことはほとんど知らないので、とりあえず物語である「火山島」を読んでみようと思う。

火山島1

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