うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

{ゲーム} 何年経っても色あせない名作サウンドノベル「かまいたちの夜」のすばらしさを語ってみる。

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「かまいたちの夜」はチュンソフトから発売された、サウンドノベルというジャンルの第二作目のゲームです。

前作「弟切草」がホラーであったのに対して、「かまいたちの夜」のメインストーリーは本格推理です。人気推理作家の我孫子武丸が、原作を担当しています。

緊迫感に満ちた面白い内容なので、普通の小説と同じように定期的に読みたくなります。実況動画をたまに見て、楽しんでいます。

 

*犯人やトリックのネタバレはしていませんが、内容に若干触れています。未プレイの方はご注意ください。

 

「かまいたちの夜」あらすじ

大学生の主人公・透は、片思いをしている同級生の真理の叔父が経営しているペンションに誘われて、二人でスキー旅行に出かける。真理の叔父の小林とその妻今日子は、長野の山奥でペンション「シュプール」を経営している。

透と真理が到着した日、ペンションには小林夫妻、ペンションの従業員である俊夫とみどり、宿泊客である若いOL三人組可奈子、亜希、啓子、関西から来た社長の香山、その妻である春子、カメラマンの美樹本、そしてサングラスとマスクで顔を隠した田中の13人がいた。

その夜、天気が荒れ、外は猛吹雪となる。

九時に突然、窓ガラスの割れる音がし、全員で二階に上がると、客室でバラバラにされた田中の遺体を発見する。

犯人が分からぬまま、ペンション内で次々と殺人事件が起こる。

 

典型的な推理小説

「かまいたちの夜」は、外部への連絡が不可能な場所に閉じ込められ、その場にいる人間が次々と死んでいくという、いわゆるクローズド・サークルの作りになっています。

閉じられた空間だから、犯人は自分たちの中にいるという恐怖、そして早くその犯人を見つけなければ次々と人が死んでいくという恐怖を余すことなく味わえます。

 

小説であれば名探偵が登場すれば事件を解決してくれますが、「かまいたちの夜」では主人公である自分が解決しなければなりません。

自分が何とかしなければ人は死んでいくし、最終的には自分や真理も命が危うくなります。

この緊迫感の描写や演出が非常にうまいです。

 

有名なクリスティの「そして誰もいなくなった」をはじめ、綾辻行人の「時計館の殺人」米澤穂信の「インシテミル」など、優れたクローズドサークルミステリーは、この追い詰められた恐怖の描写がとてもうまく、結末や犯人が分かっていても、何度読んでも恐怖を味わえます。

「かまいたちの夜」は、クローズドサークルミステリーのお手本のような作品です。サウンドノベルなので、物音や悲鳴、音楽などの演出もあり、本よりもよりリアルに恐怖を感じられます。

 

推理小説としての、難易度はそれほど高くはありません。恐らくミステリー小説を読みなれている人ならば、初見で犯人もトリックもおおよそ見当がつくと思います。

だからこそ普段まったくミステリーを読まない人でも、ミステリーの面白さを楽しめるようになっています。

そしてトリック自体は簡単なものでも、伏線の張り方や論理の展開の仕方、物語の流れなどはミステリー好きも十分、楽しめるものです。

 

自分は推理ゲームが好きで何本かやりましたが、ゲームの場合は細かいところまで考えると論理が破たんしていたり、偶然という要素が余りに大きかったり、因果が完全に転倒していたり、「ミステリー小説の猿真似」の域を脱していないゲームが非常に多いです。(いい例が、「かまいたちの夜2」です。)

 

初めてミステリーに触れる小学生から、ミステリー好きの大人まで楽しめる物語のうまさは、さすが我孫子武丸だなあという気がします。

「かまいたちの夜」で「本格もの」に目覚めたという人もいるんじゃないでしょうか?

やったことのない人は、ぜひ、一度プレイしてみてください。

かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相

かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相

 

 これ一本で「かまいたちの夜1」も「かまいたちの夜2」も遊べるみたいだけど、購入する場合は必ずご確認ください。

*ここから先は、事件の経緯や動機に触れています。未プレイの方は、読まないことをおススメします。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 多少、納得いかない点もある

 一番は、犯人の動機が「二億円の分配をめぐっての仲間割れ」なら、皆殺しをする必要性がないということです。物語内では、主人公は的外れなことばかり考えるから、口封じする必要もないし。

 

この点については初プレイ時から気になっていて、辻褄の合う説明をあれこれ考えました。そのほうがゲームが面白いからという理由が一番、なのは分かるのですが。(実際、第二の犠牲者が出たあとも犯人が当てられない場合に突入する、皆殺しモードの展開が一番面白い。)

 

これについては、皆殺しモードに入ったあとに犯人を指摘すると主人公が最後に「結局、最後まで動機が分からなかった」というので、「皆殺しモードまで行きついた世界は、二億円の分配からの仲間割れが動機ではなかった世界」とメタ構造で考えればいいのかなと自分の中では結論づけました。

(そうすると「銀行強盗のニュースを見て、田中はその一味だったのではないか」という推論を立てたことが伏線ではなく、ただの余計な話になってしまうので物語としては瑕疵が残ります。これはこれで、ちょっともにょる。)

 

あとは二番目の殺人は、バレないで殺すのはかなり難しくないかと思いました。

田中の部屋でガラスの割れた音があれだけ階下に響いたんだから、悲鳴をあげられたり物音を立てたりすればすぐに階下の人間に分かると思うし、殺すだけならともかく用具入れに死体を隠すのは時間的にかなり厳しいと思うんですよね。

口封じの衝動的な殺人が、結果的にうまくバレなかった、と考えるしかないと思います。犯人も危ない橋を渡ったものよの。

 

「また「かまいたちの夜」のようなゲームに出会えるかもしれない」

何度がっかりさせられても、そう思い、推理ゲームを探し続けるのは、昔、経験した大恋愛の相手を忘れられず、その幻影を追い求めて恋愛を繰り返すさまに似ています。

若かった自分を夢中にさせて消えていった魔性の女、「かまいたちの夜」はそんな魅力を持ったゲームです。

 

「かまいたちの夜」の「2」でなければ、「かまいたちの夜2」もそんなに悪くなかったと思います。

まあひと通りプレイし終わったら、忘れ去ったは思うけれど。