子供のころ、ゲームブックが大好きでした。
知らない人のために説明すると、ゲームブックは文章に番号が振られていて、用意された選択肢の番号に飛ぶことで、本をゲームのように楽しむことができます。
こんな感じ。
五〇:目の前に老婆と若い娘が囚われている。君は老婆を助ける(二二へ進む)若い娘を助ける(三二へ進む)どちらも助けずに、その場を立ち去る(四五に戻る)
二二:老婆は縄を解かれると、君に礼を言って金色のりんごをくれた。「隣の娘は助けないほうがいいよ。ヒヒヒ」そう言って、老婆は立ち去った。所持品に「金のりんご」を記入すること。さて君は、若い娘を助ける(三二へ進む)助けずに、その場を立ち去る(四五に戻る)
ゲームブックは、東京創元社と社会思想社が二大出版社だったと思うのですが、自分は東京創元社のものばかりやっていました。
社会思想社のもので唯一覚えているのがコレ。
本当によくできたゲームブックは、下手なスマホゲームなんかよりもよっぽど面白いです。
今日はその魅力と思い出を、全力でお伝えしたいと思います。
「ソーサリー」四部作
東京創元社のゲームブックの中で、一番有名だったと思います。
「魔法使いの丘」「城塞都市カーレ」「七匹の大蛇」「王たちの冠」の四部作でした。
「ソーサリー」で一番良いなと思うところは、日本製のゲームとは違って倫理観が重視されていないところです。
日本人が書いたゲームブックだと、道徳の教科書のような選択肢が正解であることが多いので、「何となくこっちかな」と分かるのですが、「ソーサリー」ではそんなことはありません。
人を助けようとしたら、自分が身代わりにされたり、
仲良くしていたら、だまされたり、
親切そうな人の言葉を信じたら、いきなり死んだり、
そんなことの連続でした。
基本、出てくる奴は、全員性格が悪いです。
「人を見たら、泥棒と思え」「信じられる者は己だけ」を地で行くような物語でした。
あと、なんか臭い登場人物??が多かった気がします。あやふやな記憶ですが。
最後のボスの正体を見破るまでが難しく、全選択肢をしらみつぶしに探しても辿りつけず、どの選択肢に進んでもかなり理不尽な死に方になります。
うん??? なんで??? と思うと、けっこう前のほうに「こうしなくてはいけない」というヒントが実はあったりしました。
「ソーサリー」はどうしてもクリアできなかったので、仕方がないので、一から全部読んでラスボスの登場からのストーリーを逆算して分岐を見つけてクリアしました。
あれをちゃんとクリアできた人、すごいと思う。
新しい版が出ていました。題名まで変わっていてびっくりした(゚д゚)!
自分がやったのは、コチラ。懐かしい~~。
「ドルアーガの塔」三部作
ゲームがすごく有名ですね。
ゲームブックは「悪魔に魅せられし者」「魔宮の勇者たち」「魔界の滅亡」の三部作です。
作者が鈴木直人という人なのですが、この人の作品はどれも滅茶苦茶面白いです。他のものとは格が違うという印象でした。
個人的に、ゲームブックの神だと思っています。
この人のすごいところは、一作ごとに構造や仕掛けがまったく違うということです。
例えば「ドルアーガの塔」三部作をとっても、
「悪魔に魅せられし者」は一方通行のゲーム、
「魔宮の勇者たち」は1フロア内では自由に歩き回れる、
「魔界の滅亡」は塔の40階から上のフロアを、すべて行き来可能な巨大迷路にしてるなど、一巻ごとに趣向がまったく違います。
一作ごとに新しい仕掛けを用意しており、どの作品も面白く長く遊べます。
自分が一番おススメなのは、これ。
主人公が超能力が使える女子高生で、学園ののっとりを企む魔女と戦うという物語。
周りの人間が一人ずつ殺されて、魔女が用意したドッペルゲンガーとすり替わっていく、しかも誰が本人で、誰がすり替わっているのか分からないという物語が怖くて秀逸でした。
「今夜、誰と一緒に過ごす?」(全寮制の学校なのだ)という選択肢を間違えると、ドッペルゲンガーにすり替わっていた友達に殺されたりします。
*追記(2017年4月6日)
「ティーンズ・パンタクル」をはじめ、鈴木直人のゲームブックがKindleで復刊されています。ン十年ぶりにプレイした「ティーンズ・パンタクル」の感想はコチラ↓
「ネバーランドのりんご」シリーズ
猫妖精(ブーカ)のティルトが活躍する物語で、指輪物語を下敷きにしていた舞台設定でした。
物語の雰囲気がメルヘンで、そこが良かったです。
個人的には、二作目の「ニフルハイムのユリ」が一番面白かったです。
ネバーランドシリーズではないものの、半人半狼の青年を主人公にした「ウルフヘッドシリーズ」も面白かったです。
自分の周りでは評判が良かったのは「展覧会の絵」
ムソルグスキーが作曲した「展覧会の絵」の音楽の世界を巡って冒険するという物語でした。
剣と魔法ではなく、音楽で物事を解決するというのが斬新でした。
本当に面白いゲームブックは、全選択肢をしらみつぶしに選んでいけばクリアできるという単純なものはありませんでした。
ヒントをちゃんと見逃さず、フラグをきちんと踏まないとクリアできない。
一本道のストーリーのゲームなどより、ずっと歯ごたえがあります。
自分はゲームブックのこういうところがすごく好きでした。
最近、面白いゲームがないなあと思う人は、ぜひむかし懐かしのゲームブックをやってみてください。