うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

【映画考察】難解な謎だらけ映画「メメント」を考察&解説してみた。

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Amazonプライムビデオで「メメント」を見た。

メメント (字幕版)

メメント (字幕版)

 

 

最初は物語を逆再生しているだけで、元の筋を再生し直せば意味が分かるだろうと思っていた。

ところが物語を時系列順に並べてみても、多くの謎が残る。

この物語は大きな一連の流れのほんの一部を描いているだけで、周りの部分はほぼ藪の中に等しい。

自分なりにこの物語の謎を考えたが、手がかりがかなり少ないので、根拠が乏しい妄想のような考察になってしまっていることを最初に断っておく。

あくまで一解釈として読んでもらえれば、と思う。

 

 

 

時系列順に並べた本編の粗筋

麻薬の取引に関わっている悪徳刑事テディ(ジョン・エドワード・ギャメル)は、自分が担当したレイプ事件の被害者の夫であるレナードを利用するために、モーテル「ディスカウント・イン」の21号室に閉じ込める。

レナードは一年前にレイプ事件の犯人をテディに教えてもらい、復讐のため殺害している。しかしレナードは犯人を殺したことを忘れ、今でも「ジョン・G」を追っている。

 

テディはレナードの症状を利用して、ジミーを消して彼が持つ大金を手に入れる方法を思いつく。

テディはジミーがレナードの妻を殺した犯人ジョン・Gと信じ込ませ、ジミーを殺させる。

しかしジミーの20万ドルを持ち逃げする前に、レナードから襲われる。テディはレナードに「ジョン・Gは一年前にすでに君が殺している。君はそれを忘れているだけだ」という「真実」を話す。

レナードはテディが話した「真実」を「忘れる」ことを選択して、テディの写真に「奴のウソを信じるな」と書き込み、ジミーの金と車を持ち逃げする。

 

テディは入れ墨屋にいるレナードのところにやってくる。

「ジミー・グラントという麻薬の売人でもある刑事が君を狙っている」と言い、身分証も車も服も新しくして早く逃げろ、と勧める。

レナードがテディの写真を確認すると、「奴のウソを信じるな」と書かれていたため、その場から逃亡する。

 

ジミーの服のポケットから、「後で来て。ナタリー」と書かれたバーのコースターを発見する。

ナタリーはレナードの様子を見て、彼がジミーが話していた「短期記憶ができない男」だと悟る。ナタリーはジミーの仲間であるドッドから、「ジミーの金を盗ったのではないか」と疑われている。ナタリーはレナードを利用して、ドッドもテディも殺す方法を思いつく。

 

ナタリーの思惑通りレナードはドッドを街から追い出し、テディがジョン・Gであることを知って彼を殺す。

 

映画で描かれている大まかな筋は、こういうものだ。

しかし細かい点は分からないことだらけだ。

映画を見ただけではよくわからない点を挙げてみる。

 

本編を見ても分からなかった点

(映画の構成の謎)

・白黒のシーンとカラーのシーンが分かれているのは何故なのか?

・白黒のシーンの、最初の電話の相手は誰なのか?

 

(入れ墨の謎) 

・「電話に出るな」という入れ墨は、誰が何のために入れたのか?

・ラスト近くの、胸に「復讐は完了した」という文字が刻まれたレナードと妻がベッドに寝ているシーンの意味は?

・レナードはなぜ「ジョン・G」の名前を胸に彫ったのか?

・なぜ、レナードはサミーを忘れるな、と刺青を彫ったのか。

 

(登場人物の言動の謎)

・ジミーは死ぬ間際に、なぜ「サミー」と呟いたのか。

・テディの話は、どこまで本当なのか?

 

(レナードの過去の謎) 

・回想シーンで妻がレナードに冷たいのは、何故なのか?

・レナードの妻を襲った二人組は、なぜ家に押し入ったのか?

・なぜ犯人は、麻薬を車に置きっぱなしにして逃げたのか?

・なぜ犯人は、レナードの銃と相棒の凶器を取り換えたのか?

・レナードの妻を襲った犯人は誰なのか?

 ・レナードの妻は生きているのか、死んでいるのか。

・サミーとは誰なのか?

 

登場人物たちも物事を断片的にしか話さなかったり、言っていることの裏付けがなかったり、言っていることが二転三転するので、はっきりしたことがまったく分からない。

そしてこの映画の最大の謎が、

「レナードは誰なのか?」

ということだ。

 

レナードが自分がレナードである、と信じる根拠は過去の記憶だ。

だがレナードは妻が「殺害された」事件以前の記憶はある、と主張しているが、妻が死亡した経緯や自分の経験をサミーのものだと信じているなど、過去の記憶も非常に曖昧だ。

妻との曖昧な記憶、サミーのものと信じ込んでいた自分自身の記憶以外は、レナードは自分がレナードである、という根拠を一切出していない。

 

本編は「レナードという短期記憶を覚えていられない男が、妻を殺害した犯人を復讐のために探している」という話が前提となってスタートしている。

しかしテディが「レイプ事件の時点では、妻は死んでいない」「妻を殺したのは実はレナード」と言っているため、この前提は前提ではなかったことが判明する。

ではテディの話が事実なのか、と言えばこれも疑わしい。テディは頻繁に事実とは違うことを話すことで、彼の話は基本的に信用できないことが本編では示唆されている。

 

この話は基本的には「嘘や事実ではないもの」から出来上がっている。なので「嘘をつく必要がないもの、嘘をつける状況ではないもの」を事実として、それを根拠に話を類推していくしかない。

なので、自分が作中で抱いた疑問の解釈を述べながら、物語を一から組み立てていきたい。

 

本編の疑問点の答え

(映画の構成の謎)

「白黒のシーンとカラーのシーンが分かれているのは何故なのか?」

ジミーの遺体の写真が現像されるシーンで、白黒→カラーに切り替わる。ここを起点として、白黒が過去、カラーが現在と考えるのが普通だと思う。

だがそうすると、なぜ妻が現れるシーンがカラーなのか、という説明がつかない。

白黒が「虚構の入り混じった曖昧な記憶」でカラーが「本来の記憶」なのか。

 

「白黒のシーンの、最初の電話の相手は誰なのか?」

白黒のシーンでは、最初のシーンからの電話と、途中でバートが「警察から」と言ってつないだ電話、二回電話がかかってきている。

一回目の電話では「警察が、家の外の車に麻薬があったと」「車の中身は警察はあえて追わなかった」という言葉があるので、相手は警察ではない。(とレナードは考えている。)

これは両方ともテディからの電話で、一回目は「情報屋」を名乗っていたのだと思う。

 

(入れ墨の謎) 

「『電話に出るな』という入れ墨は、誰が何のために入れたのか?」

後述の「テディの話はどこまで本当なのか?」に通ずるが、一年前にレナードが殺した人間も、テディが同じ手口で自分にとって邪魔な相手を殺させたのではないか、と仮定する。その記憶があるうちにレナードが自分への警告として彫ったのではないか。

「一年前に殺した相手が、レナードの復讐相手」というのは、どの角度から見ても非常に嘘くさい。

 

「ラスト近くの、胸に「復讐は完了した」という文字が刻まれたレナードと妻がベッドに寝ているシーンの意味は?」

このシーンで一番気になったのは、「復讐は完了した」の入れ墨が反転文字になっていないことだ。

この入れ墨を彫ったのは、レナード自身ではない。ここに文字を彫ると、上の反転文字で書かれた「ジョン・Gが妻を殺した」「彼を探して殺せ」(これも反転文字ではない)という文字も見られてしまうので、店で彫ったとは考えにくい。

本編ではこの入れ墨はなかったのだから、このシーンは本編の後のシーンである。

このシーンがレナードの妄想か、もしくは妻は今でも生きているのかどちらかの解釈しかできない。

レナードの死んだようなぼんやりとした表情を見ると、レナードの妄想とは考えにくい。

自分は妻が実は生きていて、この入れ墨を彫ったのではないかと考えている。

 

「レナードはなぜ「ジョン・G」の名前を胸に彫ったのか?」

レナードは自分の家に押し入って自分を殴った犯人が、なぜ「ジョン・G」という名前だと知っているのか?

テディが教えた、という解釈は明らかにおかしい。一年前に犯人を教えているのだから、その犯人の名前をなぜ教えなかったのか? 適当な名前を教えるにしても、自分の名前を教えれば、名前を知られてしまったときに大変なことになるのは目に見えている。(実際になった)

 

「『ジョン・G』の名前とテディの名前はなぜ同じなのか?」

一番妥当な解釈は、テディがレナードの家に押し入ったジョン・Gではないか、ということだ。レナードがジョン・Gの名前を知っていたのは、もともとテディのことを知っていたからではないか。

 

「なぜ、レナードはサミーを忘れるな、と刺青を彫ったのか」

「サミーは自分と同じ症状を持っているから、サミーと同じにならないように教訓として彫った」という表向きの理由は、本編で崩壊している。「サミーは詐欺師であり、妻もいなかった」とテディが言っている。

この部分はテディが嘘をつくメリットは何もないので、恐らく事実だろう。

 

(登場人物の言動の謎)

「ジミーは死ぬ間際に、なぜ「サミー」と呟いたのか」

殴られて殺される直前に、「自分を殺した相手がいつも話していた人物の名前」を呟くのは、かなり不自然だ。呟くとしたら自分を殺した相手の名前だろう。

 

「テディの話は、どこまで本当なのか」

レナードが警察手帳を確認しているので、刑事なのは事実だと考える。写真という証拠もあるので、前にレナードが誰かを殺したのも本当だろう。

だがそれ以外は、自分のことを情報屋でジミーのことを「悪い刑事」と言ったり、ナタリーのことを知らないふりをしたりとウソばかりつく人物であることが分かる。

 

(レナードの過去の謎) 

「回想シーンで妻がレナードに冷たいのは、何故なのか?」

後述。

「レナードの妻を襲った二人組は、なぜ家に押し入ったのか?」

押し入ったのではなく、普通に訪ねてきたのではないか? 車に麻薬が残っていたということは、取引をするためではないか?

「なぜ、麻薬を車に置きっぱなしにして逃げたのか?」

ジョン・Gが自分に疑いがかからないように逃げた。

「レナードの妻を襲った犯人は誰なのか?」

後述。

 「レナードの妻は生きているのか、死んでいるのか」

生きている。ラストのシーンから、そう考える。

「サミーとは誰なのか?」

本編のレナードが、詐欺師のサミーだと考える。

 

ここまでの考えを踏まえたストーリー

麻薬の売人であり詐欺師のサミーと悪徳警官テディは、手を組んで、麻薬の売買を行っている。

二人は麻薬の取引相手であるレナードの宅に行くが、妻が一人だと勘違いし、妻を襲う。(ジミーの首を絞めるときに、妻を襲う記憶がフラッシュバックするのはこのせいでは)棒を持ったレナードが駆けつけサミーを殴りつける。サミーは昏倒する寸前に、銃を撃ちレナードを殺害。

テディはサミーの持っていた銃を持ち出し、車の中に放り込み逃走する。

テディは事件の捜査官となり、レナードの家を訪れる。レナードが麻薬の取引にかかわっていた弱みがある妻は、テディの口どめに応じる。

 

自分の手に「サミーを忘れるな」と彫るなど記憶を保とうとするサミーに、妻は復讐のためにテディを殺させることを思いつく。

本や時計、ぬいぐるみなどのばら撒いておいておく感覚の再現を利用して、「自分の夫のレナードである」と信じさせ、胸に入れ墨を彫らせる。(この辺りは苦しいが、ナタリーやテディもあれだけレナードの行動を誘導できたので、できるのではないかと考えた)

テディとジミーはサミーの症状を知り、「ディスカウント・イン」に閉じ込めて利用することを思いつく。

 

ただこう考えても、様々な疑問や矛盾がある。

例えば自分が考えた物語だと「本当はレナードの妻が糖尿病なのに、糖尿病なのはサミーの妻」と思い込んでいた理由が分からない。

またレナードの妻を襲った二人組の自動車は「盗難車で奴の指紋がついていた」とレナードが電話の相手に語っている。

電話の相手がテディで事件の担当刑事もテディならば誤魔化せそうだが、何となくスッキリしない解釈だ。

 

また新しい考えが出て来たら、書き加えていきたい。