うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話外伝1卷~7卷までの感想

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「聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話」の外伝は、本編ではエピソードごとにアッという間に死んでいく黄金たちの活躍を見ることができる、ファンには嬉しい外伝だ。

こういう作りの外伝は、「ただそのキャラが見られればいい」というそのキャラのファンブックの要素が強くなりがちだが、「ロストキャンバス」はまったくそんなことはない。

ファンの願望もきちんと満たしつつ、それ一冊でも楽しめるようになっている。

外伝から読みだした初見の人でも楽しめるクォリティを保ちつつ、本編のファンにとっては本編の設定やストーリーを補完でき、「外伝を読んで、ようやく彼らの物語が完結した」という気持ちにさせてくれる。

相変わらず、ストーリー作りがべらぼうに上手い。

 

唯一、不満と言えば「本編で死ぬのは分かっているのに、改めて好きにさせないでくれ」という気持ちになることくらいだ。本編で好きだったキャラはもちろん、本編ではさほど興味がなかったキャラでさえそんな気持ちになる。

外伝ごとに出てくるサブキャラが「また会おう」と言うたびに辛い。もう会えないんだよ……。

 

 

 

1卷「魚座アルバフィカ編」

本編で一番最初に出てきて、あっという間に死んでしまったアルバフィカが一番手。アルバフィカのときは、まだ「(一部を除いて)全滅ストーリー」だとは分かっていなかったので、死んだときの衝撃を未だに覚えている。

「ロストキャンバス」で頻繁に用いられる、「似た境遇の他キャラへの投影を通して、自分の葛藤を乗り越えるパターン」 設定や心情がしっかりと描かれているので、何度見せられても「またこのパターンか」とは思わない。

本編では余り見られなかった平常時のアルバフィカが描かれている。

マジで美人だな~という感想しかない。小さいころは女の子にしか見えない。女の子設定でも良かった気もするが、そうすると仮面で顔を隠さなきゃいけないのか。

ルコが闇落ちした背景は気づいても良かったのだけれど、「もう終わりだろ」と思ったところで出てきたので、不意をつかれ泣いてしまった。何だかんだ言ってもペフコのことをとても大事に思っていたし、ペフコも心の底からルコを慕っていたからこそ、どうしても止めたかった。

そのルコとペフコの関係が、ルゴニスとアルバフィカの関係に重なって、ルゴニスが血を与えるときも滅茶苦茶悩んだだろうな、ペフコが死にかけて取り乱して冥王軍にすがったルコくらいに、と思うとダブルで泣ける。

また、アルバフィカが美形でペフコが「不細工」なところも上手い。

二人の外見は真反対だけれど、師匠を慕う気持ちはまったく同じ。そしてルコもルゴニスも外見なんて関係なく、我が子同然に弟子を思っている。

アルバフィカは整った外見で人を避けているのにも関わらず、繊細で人に対して情が深いところがいい。

マニゴルド編のときもジョーカに優しかったしな。

 

 

2卷「蠍座カルディア編」

本編ではアルバフィカ以上にあっという間に死んだ、カルディアが主役。

聖域に来た頃のサーシャの様子と、サーシャがアテネの現身である自分の運命を受け入れる過程も合わせて描かれている。

テスカトリポカやケツアルコアトルなど、エジプト神話の神が出てきたのはびっくりした。混じっていいのか。アスミタもいるし、いいのか。

カルディアがサーシャを連れ出したことを、滅茶苦茶面白く思ってなさそうなシジフォスの様子が面白い。他の黄金たちだとサーシャの葛藤や不安も、ただ見守るだけになりそうだから、カルディアみたいな明るいやんちゃ系も必要だな。

店の壁ぶっ壊したり、カルベラと口喧嘩したり見ていて楽しい。本編だと全然こういう日常が見られなかったことが残念。

 

 

3卷「水瓶座デジェル編」

デジェルはそんなに好きでも嫌いでもない(というより印象が薄い)のだけれど、外伝は良かった。

最初はデジェルがセルフィナと共に、舞踏会に潜入するシーンから始まる。せっかくの外伝なので、こういう日常に準じたシーンをもっと見たい。

デジェルの貴公子スタイルも良かったな。お揃いの制服の着こなし方を比べるのも楽しいが、もうちっとコスプレ感覚で色々なところを見せてくれる遊び心が欲しかったというのが正直なところ。(アスプロスが紅茶入れているとか、ああいう感じのこと)少年誌連載だから、メインターゲットに合わせていると言われればそれまでだけど。

デジェル編はクレストが少年の姿になっていたり、フローライトの視点で物事を見たりと遊び心が満載で楽しかった。個人的にはフライユ夫人が好きだ。

自分の中でデジェルの印象が薄いのは、「落ち着いたクールな美形に見えて、実は熱血」という設定が、アルバフィカと被っているからだ。アルバフィカのほうが「孤独でいなければならない」設定があるので、余計にそのギャップが際立っている。

黄金は設定上、真面目キャラが多い。

シオン、アスプロス、デフテロス、シジフォス、エルシド、デジェル、アルバフィカと、同じ真面目キャラでもキャラが立っているところはさすがなんだけれど、デジェルとアルバフィカは上手く差異化できなかったなというのが正直な感想だ。

セルフィナ、本編を見たら元気キャラなのかなと思っていたけれど、お嬢様系だった。そして両想いか。じゃああの結末は、デジェルにとっても本望だったのだろうか。

ユニティは、名前も出てこず。不憫…。

 

 

4卷「蟹座マニゴルド編」

何故か一冊だけ元々持っていたマニゴルド編。どんだけ好きなんだ。

初読のときは、マニゴルドの単独行動ではなく、アルバフィカと組んで動いているのが不満だった。アルバフィカは好きだけれど、他の外伝では主役は一人で他の黄金は出てくるとしても脇役程度なのに…。マニゴルドの出番が減るじゃないか。そう思っていた。どんだけ好きなんだ。

今回他の外伝と合わせて読み直したら、二人で出ていたほうが普段の人間関係など色々な面が見れるし、話の幅も広がる。外伝全体の流れも単調にならないし、何より見ていて華やかだ。

正反対のアルバフィカと組んだのも良かった。マニゴルドらしさが引き立っている。アルバちゃんw

カルディアもサーシャと組んでいたし、メイン・サブの組み合わせをデフォにしても面白かったかもしれない。

物語の結末がアヴィドに対して若干、肯定的なところは意見が分かれると思うけれど、自分はマニゴルドに限ってはアリだと思う。アヴィドを「先輩」と読んでいるのは、師匠同士でつながりあるからだけではなく、自分と似た属性をアヴィドに見出しているからだろう。

元々マニゴルドは追いはぎをして暮らしていたし、ジョーカもスリをしている。仕方がない部分があるとはいえ、彼らは決してアヴィドと対立する側にいるわけではない。その中で「自分とアヴィドの違いは何なのか」というテーマを含んでいるので、この落としどころは許容範囲では、と思う。

正直、他のキャラだったら微妙だと思うし、たぶんこういう話にはならなかったと思うが。

最後に「見送りにもきやがらねぇし」っていうマニゴルドが若干寂しそうなことに、今回初めて気づいた。かわいい。 

 

 

5卷「山羊座エルシド編」

本編ではプライベートなことも感情もほとんど見せなかったので、これでも相当描きこんだほうなのかもしれない。ただ生真面目で真っすぐで遊び心がないエルシドだからこそ、外伝くらい思い切った展開にして欲しかった。

男女の対等なライバル関係が好きだし、峰は真剣に刀作りに打ち込むという面白い設定だし、かなりストイックで「男らしさ」にこだわりそうなエルシドが女性に絡む、しかもライバル、というのも意外性があって良かったので、もう少しその設定を踏み込んでも良かったんじゃないだろうか。

この話の長さならフェルサーを出さずに、魔剣化した峰と対峙させる話で良かったのでは。

死ぬ間際のシーンくらいしか意識があって話しているシーンがないので、峰の魅力がまったく伝わってこない。「助けられたり、利用されたりするだけ」って、敵化するよりも残念な扱いだと思う。

またフェルサーが、峰以上に面白いキャラかと言うとそうでもないので、余計に残念。

決して悪くはないんだけど、個人的にはもうちょっとひとつの要素の濃度を上げたほうが好みかも、という感想。

 

 

6卷「天秤座 童虎編」

正伝のときもそうだったけれど、童虎は「大人」なので、そんなに心が揺れたりブレたりしないので、読んでいてもそんなにハラハラしない。

敵キャラの飛眼の設定は、もうひとひねりあったほうが良かった。

「自分がこんなにひどい目にあったから、人間なんて~~」っていう、「一人だけミクロ論」はもう古い気がする。個別体験と概念をごっちゃにする敵(しかも自分も人間)が出てくると、若干イライラしてしまう。こういう人が一堂に会して「お前も人間だろう」とお互いに突っ込みあって殺し合いをする物語が、そろそろ出てきてもいいと思う。

灰の扱いもひどかった。ここももう少し掘り下げられなかったのか。

童虎のような「できたキャラ」は、敵との感情的な対立軸も生まれづらい。その結果、灰のような敵キャラが単なる小物に見えてしまう。主人公にしたときに難しいのかなと思った。

色々と言っているが、総評としては可もなく不可もなく普通に面白かった。

 

 

7卷「獅子座レグルス編」

ほとんど思い入れがないし、評価もイマイチなので半ば義務感で購入したのだが、とても良かった。何で評価が悪いんだろう?

王道のボーイ・ミーツ・ガール、少年と少女の成長譚で綺麗にまとまっている。

まだ幼いレグルスが聖闘士になるために必ず学ばなければならない「人を守りたいと思う気持ち」 が芽生えるまでの過程が、丁寧に描かれている。レグルスの個人的テーマ「父親が至った境地を知りたい(父親を見つけたい)」の第一歩として、正伝ともつながっている。

レグルスは、バイオレートを鼻であしらうチートぶりや、天然を通り越して空気を読めないところが余り好きじゃなかったのだけれど、天性の才能を持つレグルスも、こうやって戦いながら色々なものを学んだんだなあと思うと応援したくなる。

ゲストキャラのコナーも好き。可愛くて健気で守られるばかりではなく、「自分もレグルスを守りたい」と言ったり、自分を責めるバロールにはっきり言い返す強さがある。

今までのゲストキャラは主役の黄金たちが大人であることもあり、一方的に守られ助けられる側だったので、レグルスとコナーのある種の対等さ、似ている部分が他の外伝にはない魅力になっている。

欲を言えば、コナーの後日談をもう少し長めに見たかった。