昨日、池井戸潤原作、大泉洋主演「ノーサイド・ゲーム」が最終回だった。
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ラスト近くの駆け足展開には笑ってしまった。
ラグビー協会のスピード改革やサイクロンズの面々の急速ないい人化?などもすごかったが、一番はなんと言っても脇坂の出落ち感だ。
ラストと比べると、七話はぜんぜん問題なかったな。
脇坂がラグビー界を盛り上げるためにあえて汚れ役を引き受けた、という裏話があるのかと勘繰るくらいのスピード解決だった。
これくらい確信犯的で、やりたいこと以外の部分は切り捨てているのがはっきりしていると、いっそすがすがしい。細かいところは突っ込みどころ満載だけれど、全体はまとまっているので突っ込むほうが野暮だろうという気持ちになる。
「ややこしいのは現実で十分。ドラマは、こういうスカッとした前向きで明るいものが見たい」というニーズに応えきる姿勢がよかった。
力を入れていたラグビーシーンも迫力があったし、魅力が十分伝わってきた。
1ミリも目的から外れず、やりたいことがぶれずにまっすぐに完成させたいいドラマだったと思う。
ただ、主人公の君嶋の人物像がイマイチ定まっていないことが気になった。
元々は冷徹で合理的なエリート社員だったが、アストロズと出会って仲間を思う気持ちや情熱を改めて学んだ、という流れだったけれど、家では初めからちょっと気弱だけれどいいマイホームパパだったので、このコントラストが弱かった。
最初は君嶋に非友好的だった浜畑が、最後は「君嶋を尊敬している」と伝えるシーンが山場のひとつだったので、君嶋の人物像の変化は重要だと思う。
「家庭でも仕事のことしか興味がない」など、わかりやすさを重視してよかったのでは。他がすべてがわかりやすいので、君嶋の人物像だけ重層的にしても仕方がない……というより、せっかくの山場がぼやけてしまう。
浜畑は君嶋の後任のGMになっているので、この点はかなり重要だ。
パジャマ着て奥さんに怒られる大泉洋のコミカルな演技はハマっているので、仕事シーンとのギャップとして見せたくなるのはわかるけどね。
細かいけれど、君嶋が奥さんを、子供の前でも「ママ」ではなく「真希ちゃん」と呼んでいるのがいい。半沢直樹も「花ちゃん」呼びだったけれど、原作に準拠しているのだろうか。原作を読んだら、確かめてみよう。
自分にとっての「ノーサイド・ゲーム」の魅力の八割は、滝川常務で占められている。
滝川がいなかったら、たぶん途中で見るのをやめていた。
失脚したあとに君嶋が指摘していたように、滝川は言い方は厳しく嫌味っぽいが、言っていることはしごく真っ当だった。むしろ運営アドバイスのように聞こえる部分も多かった。
劣等感と会社や仕事への愛情や誇りのあいだで揺れる葛藤がある人物像が魅力的だった。コンプレックスをばねにしてここまで昇りつめてきたが、根は素朴だった学生のころの部分が残っている、そのギャップが見ているほうに伝わるようになっている。かといってそれを前面に出して、観ているほうの共感や同情を無理に誘うわけでもない。
弱みや気の毒な部分を出して観ている人間の哀れみを乞わない、ギリギリまで「嫌な奴」でいる誇り高さがすごく好きだ。
アストロズの試合を見に来て、「チケットは自分で買った」というツンデレな感じとか、風間と密談しているときの複雑な表情とか、常務時代と失脚したあとで話し方を変えることで憑き物が落ちた感じを表しているところとか、ほんとうまい。
上川隆也は、滝川の人間的な芯や魅力がどこにあるのかよくわかっているなあと思った。
スピンオフで滝川主役の連ドラを一本作って欲しい。