2020年4月1日に行われた「新型コロナウイルスに関する専門家会議の状況分析&提言」の前半30分弱の部分の雑感。
*厚生労働省のホームページで、図表も含めた全文が読めるので、正確な情報はこちらをみてください。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解等(新型コロナウイルス感染症)|厚生労働省
3月30日の東京都の記者会見で
今後患者数がさらに増加した場合を見据えまして入院医療体制確保のイメージを記した図となっております。
都におきましてはこれまでも患者数の増加に備えまして感染症指定医療機関を中心として入院医療体制の確保を図ってまいりました。
そして現在、数で申し上げますと500床の受入体制を既に確保いたしております。今後患者さんが大幅に増加した、そのような事態に備えましては、最終的には都内全体で4,000床を確保することを目標として、東京都医師会のご協力もいただきながら症状に応じた医療提供体制の構築を進めてまいります。
また、患者数が急激に増加して医療体制が逼迫した状況になった場合には症状が無い方、または比較的軽症な方々を中心として、自宅や宿泊施設での療養をお願いする場合も出てまいります。その際にも安心して療養いただけますように、国とも十分協議をいたしまして体制の整備をしてまいります。
(「令和2年3月30日東京都記者会見」より/太字は引用者)
小池都知事がこう言っていたから、てっきり「大丈夫です、想定済みですから」という意味かと思った。
ところが二日後の専門家会議で、「東京都(他四府県)は、今日、明日にでも(医療体制への)抜本的な対策が必要」と言っているから、どっちなんだと思って見てみた。
30日の東京都の会見と1日の専門家会議の温度差がすごかった。
1日に医師会も「医療危機的状況宣言」を出しているから、各所のすり合わせがうまくいっていないうちに東京都の記者会見を見て「聞いてねええええ」となったのか、と勘繰りたくなるほどだ。
「進めてまいります、と言っただけです。これからです」と言われればそれまでだが。いかにももう大丈夫です、考えてありますという感じだから「とりあえず今のところは大丈夫なのか」と思ってしまった。ピュアか。(4月2日付の読売新聞朝刊で620床まで確保できた、と出ていたので急ピッチで進めてはいる模様。)
前半30分近い尾身副座長の話は、この「温度差」を埋めるためのものだった。大変な状況だしスピードが大事なのはわかるけれど、「まずはそちらですり合わせてから公表してくれないかな」とつい思ってしまう。
事態に直接関わっていない自分でさえそういう感想だから、医療関係や自治体、保健所などの現場の人たちは大変だろうな…。
尾身副座長の話は、
①状況分析
②対応分析
③提言
からなっている。
以下気になったところと感想。
(1:45)①(現在の)状況分析
都市部を中心に患者数が増加している。
3月21日~30日の確定日データに基づく実効再生産数の予測値が「1.7」
これはけっこうショックだった。
「第八回専門家会議」では、3月上旬はずっと「1より下回り続けている」と言っていた。
さすがにそのまま下回り続けて収束してくれるとまでは思っていなかったけれど、今の段階でかなり上がっている。
(4:00)オーバーシュート前でも医療崩壊は起こりうる。
「医療体制はひっ迫している。」
「オーバーシュートが起こるかなり前に、医療体制の機能不全が起こる可能性がある」
今回の会見はこれを言うために開いたのでは、と思うくらい、ここ周辺以外は今までの繰り返しか付けたし程度だった。
東京都の記者会見を見て温度差に驚いたのか、医師側から声があがったのか。
各々の立場で言い分があるだろうから仕方ないけれど、もう少しまとまってくれないと見ていて不安だ。
「オーバーシュートの定義」
①欧米で見られるような爆発的な患者数の増加
②2~3日で累積患者数が倍増する程度のスピードが「継続して」認められる。
3月21日~30日の10日間での確定日別患者数では、2.5日ごとに倍増している。
ただしこれは院内感染やリンクを終えている患者も含まれているため、一過性のものかもしれないので今後も注視する。
これはまずいんじゃないのか? と聞いた瞬間思ったけれど、前々から言っていたとおり「感染ルートを追えるならば大きく問題ではない」という見方らしい。
「オーバーシュートが起こるかなり前に医療崩壊が起こる可能性がある」なら、「オーバーシュート」という言葉の定義にこだわるのは意味がないような気がする。
言葉が独り歩きしないようにしているのか。
(24:35)医療崩壊に備え、市民との認識共有
後半の「保健所などの現場が疲弊しており、クラスターの発見が遅れている」
これは「第八回の専門家会議」でも「政府への提言③ 保健所が大規模なクラスター対策に専念できる人員と予算の投入」で言われていた。
布マスクを配るより、こういうところに予算や人手を回したり、トリアージの手順や方策を早急に整えたほうがいいのでは…。
専門家会議で「前も言いましたけれど」と言われると、専門家の提言は政治家にきちんと届いているのか不安になる。
勝手なイメージで密に連絡とって、報連相を繰り返して対策をとっているのだとばかり思っていたけれど、今回の件で「そもそも各部のコミュニケーションが取れているのか?」という疑問が頭に浮かんだ。
さすがにこの状況で、「コミュニケーションがとれていません」ということはない、ないと思う……ないと信じたい…。
前半部分は聞いていて「え」と思った。
一方で、諸外国の医療現場で起きている厳しい事態を踏まえれば、様々な将来の可能性も想定し、人工呼吸器など限られた医療資源の活用のあり方について、市民にも認識を共有して行くことが必要と考える。
(2020年4月1日「新型コロナウイルスに関する専門家会議の状況分析&提言」 厚生労働量ホームページより)
問題は誰が「市民にも認識を共有していく」のか、なんだろうな。
そうならない状況を一人一人が作っていくしかないのだろうけれど、こんなにあちらとこちらで噛み合っていない様子を目の当たりにすると不安だ。
「限られた医療資源の活用のあり方についての認識の共有」もこの調子でやられたら、さすがに笑えない…。
まとめ
30日の都の会見は何だったんだ、というより、あの会見の認識を塗り替えるために行われたような提言だった。
状況が変わったから方針や認識が変わるのは構わないし、むしろ状況が変わったのに当初の方針に固執されたら困るけれど、たった二日でこうなるということは、状況が変わったからではないだろう。何か大人の事情があったのでは、と妄想してしまう。
他のことなら勝手に妄想して終わりだが、この件に関しては本当に困る。
方向性を決める人たちでさえこんなにバラバラなのだから、国民が危機意識を持って、ひとつの方向性に一致団結するなんて無理では、と言いたくなるが、今はそんなことを言っている場合じゃない。
呉越同舟でもみんなでやっていくしかない……。
とは思うものの、溜息がとまらない…。