1802年、60名の乗客乗員を乗せてロンドンから出発したオブラ・ディン号が海上で消息を絶つ。60名の乗員は誰一人帰ってこなかった。
五年後の早朝、無人のオブラ・ディン号がロンドンにたどり着く。
一体、オブラディン号に何があったのか?
乗員たちはどうなったのか?
保険調査官である主人公は、船内の調査を開始する。
ブラックボックス化した経緯を解き明かす作業は、始まりと出口の落差が大きいほど「一体、なぜこんなことが起こったのか」という謎が深まり、その謎の魅力が大きくなる。
「Return of the Obra Dinn」は、ぐちゃぐちゃに絡み合った因果の糸をきれいに解きほぐし、並べる作業を思う存分楽しめる。
乗員乗客60名全員の身元を明らかにし、お互いの関係性も推理し、船内で一体、どんなことがどんな順番で起こり、何が原因で何が起こって60名全員が消えたのかということをイチから考える。
主人公は調査資料として、乗員名簿と乗員が写った写真を持っているが、最初はどの人物が誰かわからない。
断片的に主人公が見る「残された記憶」を元に、誰が誰で誰とどんな関係があるどんな人物か、どんな風に死んだのかを推理していく。
そして一人一人が死んでいった様子をつなぎ合わせて、そのとき何が起こったのか、どういう経緯を辿ったのかを考える。
ゲーム性はものすごくシンプルで、それぞれの死にざまを確認して、自分が推理した情報を入力するだけだ。
得た情報から起こった出来事の仮説を立て、他の場所で得た情報と照らし合わせて真偽を検証して、お互い同士のつながりを推理する。その繰り返しだ。
画面も白黒で必要最低限の作りで、人物も写実的で見分けがつきにくい。
しかしむしろそのシンプルで写実的なところが、リアリティを感じさせ、世界観にのめりこませる。
行動をずっと追っていくので「こいつはここで死んだのか」「あのとき、言っていた〇〇ってこいつのことか」「このときはこのあとあんな風に死ぬなんて思わなかったんだろうな」など、最初はぼんやりとした人物像の輪郭がはっきりし出し、一人の人間として浮かび上がってきたときは得も言われぬ気持ちになる。
事件現場の検証というのは、こんな気持ちなのかもしれない。
クローズド・サークルミステリーで、
(始まり)みんなで楽しくバカンス。
(終わり)全滅
という始まりと終わりだけを見せられて、誰がどんな順番で死に、時系列を考え、因果を並べなおし犯人を当てる、ということに堪らない魅力を感じる、という人は骨の髄までしゃぶりつくせるほど楽しめると思う。