突然読みたくなって、綾辻行人の「囁きシリーズ」三作、「緋色の囁き」「暗闇の囁き」「黄昏の囁き」を続けて読んでみた。
「緋色」と「暗闇」は犯人は覚えていて、細かいところは忘れていた。ほとんど初読のような気持ちで楽しめた。「黄昏」は未読。
ネタバレなし感想を書いてみた。
全寮制の女子高の話で、ほとんどの登場人物は女性。
女の子一人一人のキャラクター造形は単純化されているけれど、この年頃の女子同士の関係性や微妙な距離感、閉鎖的な空間の空気感がリアル。
世間から隔絶された暗く不気味な空間の雰囲気が楽しめる。
「囁きシリーズ」は、この雰囲気を楽しむためにストーリーが存在するととらえているので、その点では「緋色」が一番好き。個人的に「子供のみで閉鎖された暗い空間の話」に惹かれやすいというのもある。
寮で起こった最初の事件の真相はかなり壮絶で陰惨だけれど、現実的な壮絶さを感じさせないところが良かった。
「暗闇」は話の大まかな筋を覚えていた。
これも世間から隔絶した山奥の別荘の話で、昼間の時間帯のシーンもあるのに夜がずっと続いているような不気味な雰囲気がある。
「囁きシリーズ」は「館シリーズ」の中のある作品に似ているけれど、「暗闇」が一番似ている。どうしても比べてしまい、やっぱり「館シリーズのあの作品ほうが好き」となってしまう。
ずっと読んでいるものだと勘違いしていた「黄昏」。
三作連続で読むと書き方や話の見せ方が進化していることがわかる。「進化していること」ではなく、それが認識できるほどはっきりしていることに驚いた。
前二作のように雰囲気をまったり楽しみつつ話に入るという感じではなく、導入部分からぐいぐい引き込まれる。ストーリー上どの地点にいるか、現在何が一番問題視されているか、何が引っかかりとして後々生きてくるかも明確で読みやすい。
余りやったことがなかったけれど、年代が古い順に作品を読んでいくことも、そうすることによってしか見つからない発見があって楽しいかもしれない。
こんなにはっきりと「おおっ!」と思ったことはなかったので、枠組みやテーマがある程度決まっている「シリーズもの」ならではの面白さなのかも。
ここまで言っておいてなんだけれど、オチが個人的にダメなポイントを踏んでいたのでちょっと辛かった。そのオチの納得感も含めて、三作品の中では客観的には一番良かったと思う。
個人的な好きランキングは①緋色②暗闇③黄昏かな。
「囁きシリーズ」は、その特有の雰囲気を味わうことが一番の楽しさだと思うので、三作品通して読むことをオススメしたい。