見たことがあるなあ、と思ったら、この間取りは以前、はてブで見かけたことがある。
「この間取り、どこか変なところがありませんか?」という記事だった。(確か)
(引用元:「変な家」 雨穴 飛鳥新社)
こういう日常的なものは見慣れているせいか、詳細はわからなくても、一見して「何かおかしい」と気付く。
ひと目見て「怖い」と思うものより、背筋がぞわっとさせられる。
「違和感のある間取り」の何が怖いのか。
「怖い間取り」でも書いた通り、間取りを見ると「自分がそこでどう生活するか」が想像できるからでは、と思う。
間取りを見ることをポジティブな方向で考えれば、「いま、住んでいる場所とは違う生活を妄想出来る楽しさがある」のだけれど、これは裏を返せば「家の間取りによって『生活の仕方がある程度、限定される』」という言い方も出来る。
「自分の生活は、間取りによってコントロールされている」
間取りを見る魅力、楽しさ、そしてその裏返しの怖さや不気味さはここにある。
間取りは自分の日常の世界と言っていい。そこが歪められる怖さが、「間取りへの違和感」にはある。
考えてみると、ホラーとこれほど相性がいいものはない。
加えて「変な家」は、情報の出し方、展開の引っ張り方が滅茶苦茶巧い。
購入する家を探していた主人公がたまたま発見した、奇妙な間取りの家。
どこにそんなに違和感を感じるのか?
一体、なぜこんな作りになっているのか、そこにはどんな意図があるのかという推理。
家についての情報を集めようとしたときに現れた、家の関係者。
とにかく先が気になって仕方がない。
読んでいてページをめくるのがもどかしいくらいで、謎が謎を呼び、背筋がぞわぞわしっぱなしだった。
*以下ネタバレが多少あります。未読のかたは注意してください。
ただ結末はどうか、と言うと。
うーん、若干強引すぎるかな、と思った。
自分の感覚で言うと、序盤から中盤の展開と結末のジャンルが微妙に違うように感じられた。
サイコホラーが突如、オカルトになってしまったような違和感がある。
幽霊ものかと思ったら、ミステリーだった、みたいな。
同じ「怖い」「謎」のカテゴリーでも、「人間が主体か、怪異が主体か」や「心理的なものか、伝奇的なものか」はかなり受ける印象が違う。
たぶん、結末でひとつの話だったらそれはそれで悪くなかったと思う。(結末の話も、それ自体はかなり好みだ)
序盤から中盤の展開が余りに巧すぎたので、そこまで拙いわけではない結末の展開が相対的に拙く見えてしまう。
序盤から中盤の展開だけなら自分は「残穢」よりも「変な家」のほうが上だと思う。
ただ全体のバランス、「物語としてのまとまり具合」、ここが「残穢」の「読み終わった後の自分にも影響が及んでいるのではないか」というか感覚を呼び覚ますのではないかと思った。
ただそこはおいておいても、「変な家」は久し振りに「時間が許す限り先が読みたい。早く結末が知りたくてもどかしい」という気持ちにさせてくれた。
「背筋がぞわっとする謎に満ちた話が好き」という人にはおススメできる話だ。