うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

「まじめだけど、したいんです!」の感想とちょっとまじめな話。

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嘉村朗の「まじめだけど、したいんです!」を読んだ。

まじめだけど、したいんです!(2) (ジュールコミックス)

まじめだけど、したいんです!(2) (ジュールコミックス)

 

 「女子向けのシチュエーション萌え型寸止めエロ」なので、たぶん男は読んでも面白くないと思う。

 

 

好みにピッタリハマっていて面白かった。 

この手の漫画は、二人の恋愛とシチュエ―ションに萌えられるかが全てなんだけど、

 

いいね(・∀・)グ

 

自分の好みにピッタリハマっていた。

「まじめだけど」のタイトル通り、彼氏の周藤は学年二位の秀才という点以外は、恋愛慣れしていない普通の不器用男子、彼女の佳織は天然のちょっと可愛い普通の女の子。

この手の話は主人公二人が出ずっぱりでイチャコラしているので、どちらかが自分の好みじゃないとか、そもそも二人の関係に興味が持てないと読み続けるのが厳しい。

佳織と周藤はどちらも好感が持てるキャラだし、エロに興味津々なのにお互いへの気遣いも忘れないところもいい。何より本当に好きなんだな~とニヤニヤできる。

 

普段はクールを装っているが佳織の前だとグダグダになる、しかもそのことを「俺、恰好悪い」と思う周藤も可愛ければ、「私、ひわいなことばかり考えている~」とワタワタしちゃう子供っぽくて純真な佳織も可愛い。

着ぐるみを着た佳織、可愛くてヤバすぎだろ。

 

気になったのは若干、絵が崩れやすいところ。

あとはkindle版は話数売りなのが不便なので、できれば改善して欲しい。

ライバルキャラのテンプレのような宮田がまったく好きになれない……というより興味がわかない。

主人公は相手役に一途な設定が多いからグイグイくるキャラなのは仕方ないけれど、読んでいて魅力を感じない。こんな遠慮のない奴が全方位にモテるとは思えんのだが。もう少しヒネった設定がよかった。

でもまあ主役二人がエロ可愛いので、そんな些細なことはどうでもよくなる。

二人の出会い編と付き合った経緯編(やるよね)も楽しみにしている。

「女子向けちょいエロ漫画でキュンキュンしたい」という人にはおススメだ。

 

以下は漫画における男女関係のちょっとまじめな話

ここからは、「まじめだけど、したいんです!」を読んでちょっと思ったこと。

この漫画で一番いいと思ったのは、避妊の描写をしている点だ。

余りに性知識がない佳織のことを周藤が危ぶんだり、佳織が恥ずかしくて避妊具を買えなかった描写など「エロが目的なら、そこは省いてもいいのでは」と思うことも描かれている。

極めつけは佳織の母親が二人に妊娠の危険性について話して、「高校を卒業するまでは性交渉をしない」と約束させる。

エンターテイメントなので描写はコメディ調だけれど、こういう話にページ数を大幅に割いている点がすごくいい。

「高校生はまだ子供なのだから、性交渉なんてとんでもない」という言い方ではなく(二人の恋愛の障害にしたいだけならコチラにしたと思う)、自分たちが学生のときに(避妊をしたのに)出来婚をしたことで被った影響を話して、せめて高校を卒業するまでは望まない妊娠で影響を受けるようなことがないようにして欲しい、という話し方に好感が持てた。

周藤はそういう佳織の母親の言葉をちゃんと受け止める。

この辺りは実際に高校生にここまで望むのは酷だとは思うし、親がそういうことを面と向かって二人に話すのも難しいと思う。現実では難しい部分があるからこそ、こういうことが描かれている点が自分にとっては好評価だ。

 

女子向けの恋愛漫画で性交渉の話になった場合(特に学生という設定の場合)、「避妊の失敗はどうしても身体の構造上、女性がその結果を引き受けなければならない。相手がどういう人間で、好きとか恋をしているとかは関係なく、自分の身を守る知識は自分で身につけなければならない」という意識を出来れば入れて欲しい。ただ、説教臭くなく作品の雰囲気も壊さず、こういうことを自然に話の筋に組み込むのは難しい。

「まじめだけど、したいんです!」は、「したい気持ちは否定しないけれど、こういうリスクがあることは知っておこう」ということがちゃんと語られている。

 

もうひとつ気になったのが、周藤が「佳織が嫌がったり恥ずかしがったりすることを楽しんでしまう」シーンだ。前に少年漫画のそういう描写が問題になっていたことを思い出した。

青年漫画である「ちさ×ポン」では、付き合っている男女の性意識の差からのディスコミュニケーションが問題として描かれている。

www.saiusaruzzz.com

 

「まじめだけど、したいんです!」は「恥ずかしいけれど、嫌じゃない」が「嫌がっているように見える」風に描写されている。

同じようにカップルでも「ちさ×ポン」の場合は、「心がついていかないから、本当にイヤだけど言えない」という風になっている。

人間関係は「カップルだから良し」「付き合ってないからダメ」「こう見えるからこう」など第三者がジャッジできるものではなく、個々の事案でお互い同士がお互いの気持ちを探って尊重していくしかない。しかも同じ二人の間でもその関係は流動的で、その流動的な関係の中で個別事案でジャッジされるが、なおかつそれまでの積み重ねが考慮される。

そういう非常にややこしい他人との「関係」を続けるかどうか、続けるならばどのように続けていくかを自分自身が常に選び続けていくことが、他人と主体的に関係を作っていくということだと思う。

「嫌われるかもしれない」と思っても、自分の気持ちや意思は伝える。

「嫌そうに見えても嫌じゃない」「嫌そうに見えなくても嫌だった」そういうことを言える関係を、少なくとも(利害関係や力関係を利用してくる相手は別として)パートナーとは対等に築いて欲しいし、それが自分自身を大切にすることだと思うのだ。

 

そういう意味では、「ちさ×ポン」で描かれた男女の性意識の差と、女性が性的事柄について自己主張できないことによって起こるディスコミュニケーションをどう乗り越えて、どうお互いが望むコミュニケーションに変えていくか、というのは女性向けの作品でやって欲しかった。

「ちさ×ポン」の賛否が分かれているのは、このあたりをあたかも女心に理解がないポンタのみの問題のように描いているからだと思う。男が解決すべき問題のように指摘するのは(桃子の指摘といい)、一方的すぎるように感じる。

「察してちゃんと察しよすぎマン」は、女性を尊重しているようで、メタで見ると女性にとってこそ残念な描写だと思っている。

 

佳織と周藤は「言いにくいことや恥ずかしいこともお互いに伝えて、二人で関係を作っていく」ことをやっている。

女子からも自分の要望を伝えたり、自分のしたいことをしてみたりっていいね。

今後もこの関係が続いて欲しい。

まじめだけど、したいんです! 24巻 (Colorful!)

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ただそういうところを含めて「ちさ×ポン」はすごい漫画だと思う。ちょっと重いけど。 

ちさ×ポン 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

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「特に女性が性的事柄について自己主張できないことによって起こる、交際中の男女のディスコミュニケーション」

この手の話で思い出すのは「ビタミン」。

主人公の元彼がクソすぎて衝撃だった。「ビタミン」の怖いところは、元彼のクソさが前座にすぎないところだが。

ただ「ちさ×ポン」のように相手に好意があって尊重しているつもりでも、起きがちな問題ではあると思う。

ビタミン (別冊フレンドコミックス)

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