「モンキーピーク」が全12巻で完結した。
想像以上にやっつけな終わり方だった。
内容のつじつまやキャラの掘り下げや、伏線やフラグの回収がどうこう以前に、「とりあえず風呂敷をたたんだ風に見えればいいだろう」という気持ちが伝わってきた。
ただ10卷の段階で「パニックホラーとして読もう」と割り切ったので、作品の開き直りっぷりとこちらのテンションがかみ合って、意外と読んでいて面白かった。
最後に早乙女と佐藤がくっついたのはビビった。この話のやっつけ具合には慣れていたつもりだったが、こちらの想像を上回ってきた。
「そんなフラグ何もない」「むしろ佐藤は遠野に(恋愛感情ではないのはわかるが)あれだけ思い入れていたのに」ということ以前に、「余り者同士(生き残った者同士)が、とくに前触れもなく救済措置として適当にくっつく」というよくある恋愛漫画のパターンを、まさか主人公に適用する漫画があるとは、という驚きがすごかった。
林の唐突な裏切りも、安西の正義の仮面→猿化→中途半端な出戻りいい人化の切り替えの早さ、結局八木兄妹は何だったんだなど他の突っ込みどころがすべてが霞む。
そんな余計なことを書く暇があるなら、トオルの背景とか、こんな荒唐無稽な殺人計画に参加した人たちの苦しみを描いてもう少し読者の共感を呼ぶとか、長谷川の区分けのもう少し細かい区分とか、死んだ人の中で誰がどの区分だったのかとか、関係ない人を巻き添えにしているときの長谷川と林の苦悩とか、いくらでも書くことがあるのに。
前社長を殺せるということは、他の標的も地上で殺そうと思えば殺せたのに、関係ない部署の社員も含めて区分けして、殺人劇を仕立てる。しかもイレギュラーな要素が多すぎて、会社とすら関係ない犠牲が出る、とかいうひどい計画なので、どんな描き方をされてもかえって白々しいのでこれでよかったのかもしれない。
「モンキーピーク」は恐らくは綿密なプロットを汲んでいなくて、「山奥で社員旅行の最中に殺人鬼に襲われたサバイバルゲーム」というワンアイディアを、ジェットコースターみたいに走らせた話だったのだと思う。
そういう作品のテンションとこちらの「展開のスピード感を楽しむ話なんだから、余りうるさく考えずそれを楽しもう」という割り切りがかみ合えば、意外と細かいことは気にならない……というより、気になってもなんだかんだ楽しめてしまう。
「深く考えなけば、物語の体裁はとっているので、その範囲内で楽しもう」という感じだ。
最近では、「ノーサイド・ゲーム」がそうだった。
「書き手と読み手の相互作用」「書き手の思惑と読み手の期待値と方向性がどこまで一致するか」がけっこう大切なんだな、と思った。
読み手が無理やり期待値や方向性を合わせる必要はないけれど、ある程度は合わせたほうがお互い幸せになれる話もある。
言葉にすると文句ばかりになってしまうけれど、読んでいる最中はけっこう楽しかったし面白かったので満足している。