うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

【ネタバレ感想】「モンキーピーク」10卷まで。読みかたについての反省会。

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2019年5月29日に「モンキーピーク」10卷が発売された。

モンキーピーク 10

モンキーピーク 10

 

 だいぶ読むモチベーションが下がっていたけれど、最近また面白くなってきた。

 

読み方についての反省会

内容が急激に面白くなったとか、好きな展開になったというわけではなく、「モンキーピーク」は元々こういう話だった。

変わったのは自分の読み方だ。

5卷くらいまでミステリー……というより謎解きとして読みすぎていた。

「パニックホラー」として読めばよかった。そう言っているのだから。

 

犯人たちもコントロールできない、次々変わる状況の中で、殺す側も逃げる側もどう対応していくか。

犯人たちがきっちり緻密に計画を立てて、計画通りに遂行されていく中でそれを解き明かしどう食い止めるかを考える話ではなく、予測不能な二転三転する展開と、その展開の中でも臨機応変に殺し合う(!)様の驚きやハラハラする感覚を楽しむ話なのだ。

安斎が氷室を拷問したことや八木兄妹が現れたことなど、犯人たちにとっても予測不能な展開はたくさんあった。

 

細かく考え出すと、色々と引っかかる。

安斎と氷室が一番の標的なら、今まで殺す機会はあったんじゃないか? というより、この計画自体がいらないのではないか。

会社の人間全員に復讐するつもりなら、この計画が完遂されれば満足、という捨て身の計画は立てないだろう。前社長が来ていないし。

計画が強い殺意に基づいているわりには、運任せの要素が強くないか。

ロープウェイがある、登山未経験者もいる会社のレクリエーションができる山ということを考えると、他の登山者がいる可能性もあるし(実際いた)不確定要素が混ざる可能性が多すぎる。

自分が死んでも捕まってもいいなら、社を爆破するなど、他に手っ取り早い方法がいくらでもありそうだ。うまくいけば事故に見せかけられる。

計画が捕まりたくない前提なのに、実際の行動が捕まってもいい死んでもいい前提なので混乱する。

 

ひとつひとつは「そういうものか」と思えても、全体の行動を通してみると行動の判断基準が違って見える。

「屍人荘の殺人」の犯人のように、その場その場で判断の基準がブレすぎじゃないか、と思ってしまう。

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ただそういう風に読むよりは、「モンキーピーク」は次々と変わる状況に身を任せて、その瞬間瞬間で感じる意外さや恐怖や絶望に意識を持っていくほうが面白いし、恐らく元々そうやって楽しむ話だと思う。

「社内のレクリエーションで来た山で、復讐劇が起こる」ということは前提として受け入れる。

「弟の話はやっぱり伏線だったんだ」という見方ではなく、宮田と一緒に「林ちゃん、嘘だろ!」と叫んで、ヒロインに見えた林の裏切りを楽しむ。

 

「モンキーピーク」を読んでいて気づいたのは、物語を見る視点が遠くなりやすくなったことだ。「モンキーピーク」も元々は「山登りする感覚」を楽しんでいたのに、すぐに足が作内の地面から離れてしまった。

登場人物として話の中に参加したり、誰かに感情移入して読むことが前よりも少なくなっている。

 

小説では地の文章が全知全能の三人称で書かれていれば客観視点が推奨されるし、一人称の文章であれば語り手の視点で物語を見ることが想定されている。ある程度書き方の形式でも、どういう読み方が標準か分かる。

読み方は自由だが、「楽しむこと」が目的であればある程度は、作り手の意図を汲むことも大事かもしれない。

自分は「作り手」「書き手」という存在を物語の中に基本的に組み込まない読み方が好きなので(なので作家や制作者のインタビューはほとんど読まない)、その弊害かもしれない。

「物語は絶対的なテキストではなく、読み手が読んで解釈し、作用することで初めて『物語』として成立する」

というのが自分の考えだ。

ただ「何がどうあろうと、自分はこう読む」というのは、それはそれで目的を見失っている。

 

読み手に考えさせるのではなく、シチュエーションを体感させる方策を練るのも作り手の技術と言えばそう思う。(というより、普段はこちらの意見)

ただ今回は楽しむための前提となる土俵にのろうとせず、「面白くない」と思っていたのは良くなかった、と反省した。

読み方や見方は自由というのはそうだとしても、わざわざ面白くない見方(読み方)をして「面白くない」と言われても、作り手も困るだろう。

 

「モンキーピーク」は読み手を楽しませるための仕掛けをたくさん作っているし、ある程度進んだ時点で「こういう読み方が面白い」ということがわかりやすい話なのに、読み方が偏りすぎていた。

実際パニックホラーとして読むと、状況がどんどん移り変わっていき、敵味方が二転三転する様子は読んでいて楽しい。

 

10巻までのキャラクターについて雑感

安斎の闇落ちならぬ猿落ちは、「お約束通りなるぞ」と思わせてならず、「もういいだろ」と思ったところでなったのでずっこけた。今さらか~~。

元々が人がどんどん死ぬ話なので、「物語のためにキャラがいる」という扱いでちょうどいいと思う。安斎や遠野はちょっと深堀りして二面性を出そうとしたために、逆に扱いが雑に見えてしまう。

それなら宮田をもうちょっと掘っても良かったのでは。

「中高…そして…会社でも疎遠にしていてごめんな」

って、そうだったのか? 

初登場のときからスーツを着てきたことについて和気あいあいと話したり、早乙女の殺人犯疑惑を庇ったり、普通に仲が良いのかと思っていた。

宮田が崖から落ちたことより、こっちに驚いた。

「お前は立派な男だ」は、重みのあるいいセリフだな。

 

キャラクターでは林が好きだ。(佐藤も好き)

裏切りが発覚する前から、常に冷静で考えがしっかりしていた。リーダーに向いている。

こういう計画を進めるために、心優しい女性を最後まで装っていたこと対して、性格的にも能力的にも納得がいく。

林はこんな状況でもしっかり自分の頭で考えられる人だったのに、どうしたんだよ急に。

「安斎=猿の仲間説」に異を唱えなかったことについて六巻の感想でこう書いたが、安斎が疑われたらむしろ好都合と思っていた、と考えるとなるほどと思う。

 

元々ありがちな優しい善人フワフワヒロインに見えて、極限の状況で一番冷静でしっかり者だった林ちゃんが好きだったが、10卷の展開でますます好きになった。

鬼の形相で怒り狂い、復讐に突っ走る林ちゃん素敵だ。

最後まで激情とクールさを合わせ持つ、復讐鬼でいて欲しい。できれば、生き残って罪を償って欲しいが、関係ない人も死んでいるので難しいかもしれない。

 

10卷くらいで完結すると思っていたが、「トオル」や本物の猿(?)も出てきたし、まだまだ続きそうだ。

前巻までは、いい加減終わってもいいのでは、と思っていたが、面白くなってきたのでこのまま続いて欲しい。

 

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最初のころ、猿が早乙女の父親で、最後は親子対決になるんじゃないかと思っていたがさすがにないか。いや、期待したい。

 

最初のころチラホラ流れていた、「田中さん=猿説」の検証記事。

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遠野の死に方にガクっときて、テンションが落ちた。

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これだけ書いているから、なんだかんだ言ってやっぱり好きなんだな。