Amazonでジャケ買いした。
山に纏わる人間には及びつかない領域や、そこに足を踏み入れてしまった人間の末路を集めた小話集。
ひとつひとつの話はそこまで怖くもないし斬新でもないが、話を連続して読むことと絵の上手さで、理解できない異世界を覗いてしまったかのような恐怖を体験できる。
とくに好き、印象深かった話の感想
「怪肆猿様」
生まれたときから、何かに呪縛されている話は「踏み入れてしまった話」とは違うおぞましさがある。「長女」にのみ義務が課せられ、そこから逃れれば即悲惨なことが待っていると言われ続けるのは、生まれたときから狭い箱に閉じ込められているような息苦しさがある。
「怪伍無人駅」
山ではなくて、駅が畏怖すべき何かである話。埋められない価値観の差を目の当たりにするのは怖い。
「怪陸すそ」
祟りとなった母親の禍々しさ、これだけの呪詛を吐く何があったのかがわからないところが不気味で良かった。
姿によって、その「モノ」の凶悪さ、恐ろしさ、呪いの深さがひと目でわかるのは漫画ならではだ。
続き物だったら良かったな。
「怪漆オートキャンプ」
好き。
こういう円環構造の話にとことん弱い。
「怪拾灯籠流し」
話自体はありがちだけど、子供同士の微妙な関係やパワーバランスを描いているところが良かった。
面白かったけれど、単発の話ばかりなので読み物としてはちょっと弱かった。
「後遺症ラジオ」のように各話につながりがあって、読み終わったあとに全体としても楽しめたらもっと良かった。