うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

栗本薫「グイン・サーガ」27巻まで。パロくねくね編、イシュトの国盗り始まり&グインのユラニア遠征の始まり。

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前回、23巻まで。ケイロニア編。

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「天華」に夢中になっていて、すっかりご無沙汰していたグイン・サーガ。

いよいよ、イシュトの国盗り&ユラニア遠征か、と思っていたが、その前にパロのナリス対スカールのくねくね編があった、と思い出した。

 

それにしてもイシュトは悪い奴だな

19巻からずっと「太子さまを庇って死ぬフラグ」を立て続けていたリー・ファ。

わかっていても泣ける。

ター・ウォンとタズドのお小姓コンビの死も辛い。

 

イシュトは善悪の区別がない、ダークヒーローぶりが魅力ではあるけれど、それにしても女子供まで皆殺しにするのはちょっと引く。

イシュトがどんどん残酷になるのはアリのせい、みたいな流れはこの辺りからあったんだな。何でもかんでもアリのせいにされるこの流れが、初読の時に嫌な予感がした。

このあと「もう王にならなくてもいいや」ブームも来ても突き進むのを止めなかったのも、アリの執着のせいになるし。

どうせ、悪辣で残虐な「ゴーラの僭王」になるなら、本人がなりたくてそうなったというほうが展開としては好みだ。

後にアリがリーロを殺したことを責めていたが、この辺りの流れを見ると子供を殺したことをイシュトもとやかく言えないのではと思ってしまう。

 

パロくねくね編もしくはレムスの陰キャぶりが気の毒すぎる

ナリスのことは余り好きではない(穏当な表現)が、

人と生まれて、人にすぐれた知能を与えられたからには、この世界さいごの秘密を知りたいと思って何が悪い。人として最高の野望を知らぬものこそ生まれてきた価値もない。

私は、何もかもをときあかしたい。

ときあかしてどうしょうという心もない。ただ、知りたいのだ。

(引用元:「グイン・サーガ25 パロのワルツ」栗本薫 早川書房/太字は引用者)

 

この気持ちは分かる。「この世界さいごの秘密」を探れるほど頭よくないけれど。

「単純に知らないことを知りたい知識欲優先」の気持ちはわかる、という人はけっこう多いんじゃないかな。

騎馬の民のように、「目の前にあるものにしか興味はない」という人のほうが珍しい……わけでもないのだろうか?

 

ナリスのモテ会話は勉強になるな。

きみは小さな白いマリニアなどではなく、華やかなロザリアなんだ。

こんどから、わたしのロザリアがしおれていたら、必ず、わたしが放っておかないよ。

(引用元:「グイン・サーガ25 パロのワルツ」栗本薫 早川書房)

 

「この間から私に近づこうとなさって、何のおつもり?」

「淋しくて」

「ご冗談ばかり」

「本当です。だのに、あなたといえばちっとも信じて下さらないで。かわされてばかり」(略)

「どうして、淋しいんですの」

「さあ、どうしてかな。教えて下さい」

(引用元:「グイン・サーガ26 白虹」栗本薫 早川書房)

 

公的な場面では「質問に質問で返すな」とよく言われるけれど、恋愛においては質問にはむしろ質問で返すべきだな。(学び)

「貴族の恋愛遊戯」をここまで的確に描けるのは凄い。

 

今回読んで、ナリスがリンダに露骨に焼きもちを焼いていることに気付いてちょっと驚いた。

まあ確かに当然自分と結婚するものと思っていた子から、「好きな人が出来た」と相談されたら死にたくなるくらい恥ずかしいな。

昔はまったく気付かず、訳がわからなくてリンダと一緒に目を点にしていたけど、今は「ナリスも可愛いところがあるな」とニヤニヤが止まらない。

 

レムスは完全に、「陽キャ集団の中のぼっち陰キャ」になっている。周りの大人たちが、「もう少し、子供であることを認めて頼ればみんな『可愛い』と思って助けてくれるのに」とわかっているところも面白い。

グインがレムスに忠告した「王は果実を取る人ではなく捧げられる人」もそういうことだと思うけれど、レムスが気付いていないところが何とも。

 

レムスは早々に引き上げ、寝所にとじこもり、貧乏くじでがっかりしている宿直の小姓にあたりちらして寝衣に着替えると、さっさと布団にもぐってしまったが、灯を消してしまっても、窓からキタラや人々の楽しそうな笑い声は風にのってきこえてくるし、様々な感情の激動のために、目もすっかり冴えてしまった。(略)

人々は明け方まで楽しげにさわぎつづけ、かわいそうなレムスは一人ぼっちで布団を頭までかぶって、カーテンのすきまからもれる華やかな灯りを見まいとしながら、何とも寂寞とした、みじめな思いをかみしめて寝返りばかりうっていた。

(引用元:「グイン・サーガ26 白虹」栗本薫 早川書房)

 

描写に容赦がなさすぎる。

盗賊砦の大宴会の描写やイシュトのはしゃぎぶりといい、リーナスの婚約パーティーの様子といい、「グイン・サーガ」は基本的に陰キャに厳しい世界だ。

 

相変わらずなアムネリス。

いま、GOTのシーズン8を見ているが、冷静で狡猾な女公になったサンサを見て惚れ惚れしている。

アムネリスもこうなると思っていたのに……この後に及んで、「ナリスが本当に自分を何とも思っていなかったのか知りたい」とか言い出すのにはびっくりする。

ナリスはアムネリスのことなど頭の片隅にもなく、スカール相手にくねくねしたり、リンダ相手に拗ねてツンデレしている真っ最中だよ、とヤーンに代わって伝えたい気持ちだ。

同じように男に騙されて、無力な立場で虐げられて、どうしてこんなにも違うんだ。

デナーリスのように闇堕ちしたほうがまだしもマシだ。

 

しかも「無礼な男だから気になってしまう」という男を好きになるパターンが、ナリスの時と同じじゃないか。

一回、痛いめをみているのに…。学ばない人だな。

アムネリスは一見、気が強くて誇り高くて、考えているようにも見えて、後々中身がないことがわかるところがマイナスポイントが高い。

 

フロリーが可愛すぎて気絶しそうになる。

以前はそこまで気に留めていなかった、フロリーにドはまりしている。

大人しくてか弱いのに、プルプル震えながらアムネリスに忠誠を尽くす健気な姿に心を打ち抜かれた。

アムネリスとの百合もときめく。

俺の好みとしては、少しばかり美しくたって、おまえのような生意気な女より、こういう大人しそうな、手ごめにされたら泣きくずれて、そのまま身でも投げてしまいそうな女の方がずっといいな。

(引用元:「グイン・サーガ28 光の公女」栗本薫 早川書房)

 

タルーの言い草はクソだが、イシュトもフロリーを見て「あの娘はいいな」と言っている。タルーとイシュトと自分で「フロリー、可愛い」は一致している。(タルーと一緒にされるのは嫌だが)

 

こういう女の子は特に、タルーやイシュトのように「悪いこと」にコミットしている男にやたらモテるところにリアリティがある。

同じように「主人の美形の恋人」でも、ナリスは「主人の恋人」としか思っていないのに対して、イシュトには簡単に惚れてしまうというのも凄く分かる。

大人しくて健気で純粋な女の子と裏街道を歩いてきた悪党というのは、お互いがお互いを自分にない部分として惹かれ合うのは王道ですね。イシュトはリンダにマジ惚れしたところといい、何だかんだ言って純粋で健気な子が好みなんだろう。

 

自分の中でフロリーが、最推しのシルヴィアを猛追している。いや、シルヴィアも可愛いのだが。

ツンデレと健気かあ。どっちもいいなあ。

フロリーにハマったことで、これからの展開を新鮮な視点で読めそうだ。

フロリーの気持ちにまったく気づかず、イシュトとの仲を惚気るアムネリスをうぜえと思ってしまいそうだが。(まあこれは前から思っていたけれど)

 

ダルシウスの述懐に感じ入る

わしは、好きだよ。わしはケイロニアの国が好きだ。(略)

サイロンの都も好きだし、アキレウス陛下も、陛下がまだごくお若い、血気さかんな少年のころから、好きな少年だった。(略)

グイン、おのがつかえる主君を心から好きだと思えるほど、幸せなことはない。

わしは幸せ者だよ。

(引用元:「グイン・サーガ26 白虹」栗本薫 早川書房/太字は引用者)

 

国が好きで大事で忠義を尽くしたいと思っても、そこを治める主君は人間的に好感を持てない、尊敬も出来ないということは、こういう世界だと往々にしてあるだろう。

それでも国やそこに住む人を守るためには、その主君の名前の下で戦わなくてはならない、というのは考えてみればキツいことだろうなと思う。

「おのがつかえる主君を心から好きだと思えるほど、幸せなことはない」

武人として生きてきたダルシウスは、自分がとても幸運だったと分かっていたんだな、と思うと心に染み入る。

 

28巻からはしばらくアルセイス編か。ユラニアの三醜女が出てくるな。

 

次。30巻まで。

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