*物語の核心以外の若干のネタバレがあります。未読のかたはご注意下さい。
楽しみにしていた雨穴「変な絵」が発売されたので、さっそく購入した。
ほぼ一気読み。
前回の記事で書いた通り、雨穴の話は導入から中盤までは滅茶苦茶面白いのに、「落ちが強引すぎる」と思うことが多い。
しかし「変な絵」はそんなことはなく、オチまで大満足だった。
なぜ「変な絵」に限っては、「オチも大満足」だったか。
話の造りが従来のものと違うからだ。
ストーリー自体は(言っては悪いが)それほど大したものではなくありきたりなものだ。
だが「このストーリーをその角度から見せるか」「そういう構成でつなぐか」という、話の構成自体に仕掛けがある。
未解決の大量殺人の真相を、人々の色々なデマや仮説の積み重ねから作られた「猫箱」に例えるあの話などと同じジャンルだ。
「変な絵」は話の全体像を、核心から遠い場所のピースから見せる。
その「端」はそれ自体にも謎があり、これが全体像にとってどんな意味があるのか最初はわからない。謎を解くことで、その形が明らかになり、初めてパズルを組み立てるピースとして手に取ることが出来る。
ピースそれぞれの謎も面白いので読んでいて飽きない。「そのピースがここにハマるのか」という驚きもある。
そのピースの形の現れ方、全体像へのハマり具合は意外性がありつつも納得がいくものだ。
少しずつ全景が明らかになっていくので、何もしていないのに(推理をサボっていても)自分でパズルを解いているような爽快感を味合わえる。
ストーリーはある殺人鬼の話だが、情緒的な要素はほとんど深堀りされないので、動機はかなり強引に感じた。
ここは好みが分かれるかもしれない。
自分も普通の構成のストーリーであれば気になったと思う。
ただ「変な絵」の主役は人間たちではなく、彼らが書き残す絵の謎であり、その謎が解かれることによって見えてくる全体像(変な絵)だ。
このパズルの組み立てる過程こそが、この話の主人公と言える。
ピースである人間たちの心境は、さほど本筋と関係ないと割り切れる。
普段は「サイコパスは二人までにしろ」などうるさいのに、現金なものである。
一章 唐突に更新が止まった幸せそうな日記ブログに上げられた三枚の絵の謎。
二章 母子家庭の子供が「自分の家を塗りつぶした」理由。
三章 惨殺された男が死ぬ間際に残した、風景画の謎。
四章 母親を殺した少女が描いた絵と彼女の未来。
これらがぴったり合わさっていく様が読んでいて爽快だ。
謎解きモキュメンタリー大好き、という人にはぜひぜひおススメしたい。
それにしても栗原さん、スーパーマンすぎ笑
雨穴の動画や本の感想。
「変な家」はオチはちょっと……と思ったが、導入は「変な絵」よりも好きだった。間取り好き。
雨穴が出演した、2022年12月10日「マツコ会議」の感想。