うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

雨穴「変な家2」を謎解き推理して答え合わせしてみた&ネタバレ感想

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一見無関係に見える11の間取り図とそこにまつわる謎から、背後に隠れている不気味なストーリーが浮かび上がる「変な家2」を読み終わった。

ひとつひとつの間取りにまつわる話は、単体だけでも面白い。

特に序盤の「①行先のない廊下」「②闇をはぐくむ家」「③林の中の水車小屋」「④ネズミ捕りの家」「⑤そこにあった事故物件」は、それぞれまったくの別の不気味さ、怖さ、謎があるため、読み進むごとに怖さが増幅していく。

「②闇をはぐくむ家」に出てきた、「どの家に住むかでどういう生活をするかが定まり、そのことによってある程度人格が形成されていく」「家の穢れを取るなんて、まるで人よりも家が偉いみたいじゃないか。そうではなく、亡くなった人を家から解放する仕事なのだ」という特殊清掃員の飯村さんの話は全体のストーリーに関わると同時に、「変な家」シリーズに通底する価値観に感じられた。

「家を清めるのではなく、亡くなった人から家の呪縛を断ち切る仕事なのだ」という考え方はなるほどと思う。

 

「変な家2」は冒頭に

 さて、この本には、それら数ある「変な家」の中から、11軒に関する調査資料を収録した。

 一見、それぞれの資料は無関係に見えるかもしれない。しかし、注意深く読むと、一つのつながりが浮かび上がってくる。

 ぜひ、推理しながら読んでいただきたい。

(引用元:「変な家2~11の間取り図~」雨穴 飛鳥新社/太字は引用者) 

と書かれているので、最後の「栗原の推理」を読む前に自分でも推理してみた。

栗原さんも指摘している通り、「⑥再生の館」まで読むとストーリーの大筋は見えてくる。

比較的わかりやすくヒントも散りばめてくれているので、「わかった」という爽快感も味わえた。

「間取り」「謎解き」「背筋が寒くなる不気味な話」このうちのどれかひとつでも好きな人にはおススメだ。

 

*以下、自分がした推理と全編読み終わった後の感想

(ネタバレ注意・未読の人は先に本編を読んでから読むことを強くおススメします)

 

資料⑪まで読み終わった後の推理

御堂陽華璃=ヤエコは、清親と絹の不倫によって生まれた不義の子だった。

清親妻が絹を殺害した時に、左腕を傷つけられた。

清親妻は赤子は殺せず、水無宇希の叔父夫婦にヤエコを預ける。叔父夫婦は清親妻が絹を殺したことを黙認したため、ヤエコは叔父夫婦を恨むようになる。

ヤエコは置棟に入るが、ここではヤエコと共に娘も売春をさせられる。(親子ともども売春をさせられているから、実際は四人に見えて八人からの実入りがある)

ここで幼女趣味がある緋倉正彦がヤエコの娘の常連になり、母娘ともども引き取る。

緋倉はヤエコと結婚しながら娘とも関係を持ち続ける。(ヤエコ娘の娘が、「④鼠捕りの家」に出てきたミツコ)

ヤエコは自分(と娘)がこのような境遇に陥ったのは、不義の子として生まれたためだ、と考えた。

親の不義が、その間に生まれた「不義の子」である子供に不幸をもたらす。

その考えのもとに、不義を働き子供を作った人間に贖罪させる宗教を作る。

緋倉をゆすって、ヒクラメーカーに贖罪のための家を作らせ、それを信徒に買わせる。信徒になった人間は押し入れなど狭い空間に閉じこもって、家の心臓の部分においた人形に謝罪する。そうすることで罪が清められ、不義によって生まれた子には罪が及ばなくなるという信仰を広めている。

ミツコは、母親から自分が生まれるまでの状況を聞き、祖母ヤエコを恨み嫌悪するようになる。

母親の復讐のため、ヤエコの杖を隠し殺害する。

 

最後まで読んだ感想

大まかな筋は合っていた。

大きく違う点は、ヤエコではなくその娘(ミツコの母親)が首謀者だったところだ。

ヤエコの娘は「置棟」の資料で存在を示唆されているだけで、名前すら出てこない。

推理として見ると、さすがにそれを組み込むのは無理だろうと思う。

ただホラーとして見た時、「最後のミツコの真相告白」にしかヤエコ娘(ミツコ母)の存在が出てこないことが後味の悪さとして作用している。

「ヤエコの娘」という存在は本当にいるのだろうか。

作内では、ミツコだけではなく西春明美も満も目撃しているのだから存在しているのは間違いない。

だが作外視点で見ると、娘にすら容赦なく害意を向けることも相まって、人ではない悪意の暗喩のように思える。再生の館やヒクラハウスがヤエコの身体のメタファーだったように。

百年の昔の密通から連鎖のようにストーリーが生成されて、そのストーリーが進むごとに悪意が増幅していき、最後には人の手ではどうすることもできない怪物を生み出してしまう。

「変な家2」で一番好きなところは、辻褄が合うストーリーの底に理屈では説明がつかず、理解することもできない因果の恐ろしさを感じられたところだ。

 

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