うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

【VIVANT(ヴィヴァン)キャラ語り】ノコルというキャラの魅力に気付くまで。

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普段はほとんどドラマを見ない相方が観ていたため、結局何だかんだ一緒に最後まで観た。視聴率も良く、終わったあとの感想も盛り上がっている模様。

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このドラマで自分の心に一番残ったのは、主人公・憂助の義弟であるノコルである。

この記事では、自分の中でノコルの存在がどう変化していったかを話したい。

 

最初にノコルを見た時、「ベキやテントに、何か疑問や屈託を持って従っているのでは」と思った。

常に眉間に皺を寄せている。仲間が裏切っても動揺を見せず、淡々となすべきことをこなす。

表情は常に冷たいか不機嫌そうに見える。

仲間といる時もそうで、周りの人間とも距離感があり心を開いているように見えない。

誰も信用しておらず、愛情を持って育てられた形跡が見られないので、主人公・憂助との関わり合いの中で「人を信頼する気持ち」を持つようになる、もしくは父親の愛を求める憂助との対比となる愛情に価値を認めていないキャラなのだろうと思っていた。

よくあるパターンなので特に気に留めず見ていた。

 

最初に「おや?」と思ったのは、ベキが憂助を実の子と認め、自分が運営する孤児院に連れて行った時だ。

ノコルはベキと同じくらい孤児たちに愛情を持ち、慕われているように見える。

ただその割には他の点では「いい人」に見えない。

憂助に対して不信感をむき出しなのはわかるが、組織外の人間に対して容赦がない以前に冷徹すぎるし、何よりベキに対してかなり距離感がある。

ベキが憂助を実の子供と認めた後も、憂助に対して敵意丸出しの態度が変わらないので、「ベキに対して何かのわだかまりがあるが、根はいい人なのかな」と考える。

崖に落ちて死んだ子供を抱きしめて泣くシーンでは、「ノコルにはこれくらいの年で同じように不慮の事故で死んだ兄弟がいて、そのことにベキが何か関わっているのかな」と勝手に想像する。

登場時からのあの雰囲気で「根はいい人」の設定にご都合主義を感じ、この時点でもさほど気になるキャラではなかった。

最後は改心?して「父さん、兄さん」など呟いて、これまでの経緯に整理をつけて終わるんだろう。

 

最初にノコルに興味を惹かれたのは、ベキに赤ん坊のころに拾われて育てられたという設定を知った時だ。

ベキが「息子」「家族」と連呼しているだけかと思いきや、字義通りの「実の子供同然」だったのだ。

だがノコルの言動を見ると、まったくそう見えない。

ノコルのベキに対する態度や距離感は、最大限好意的に見ても「緊張関係にある上司と部下」だ。

憂助と黒須のほうがよほど心を開きあっているように見える。

ただの野心家でテントを乗っ取ろうとしているだけなのか。

だから憂助に対して、露骨に不信と敵意を向けるのだろうか。

 

だがフローライトの採掘権を巡る話で、友人のゴビをまったく疑わないノコルを見て気付いた。

「仲良くない奴には厳しく冷たく、敵意や猜疑を向けるけれど、だからこそ一度心を開くと相手のすべてを受け入れてしまい、ツユほども疑わなくなってしまうタイプだ」と。

性格的には「ごく素朴な普通の人」なのだ。こう言ってはなんだが、テントのような組織に向いている性格に見えない。

 

ただそうだとすると、

「友人であるゴビのことをまったく疑わず、裏切られたと知った時に強い衝撃を受けたノコルが、なぜ実の親同然のベキにはあんなによそよそしいのか。(ベキに対して何か屈託を持っている設定もなさそうだし)」

と今度はその点が不思議だった。

その疑問は、ゴビに裏切られたと知ってベキの前で泣き崩れたノコルを見た時に解けた。

ベキを尊敬しすぎていて、家族とは思えない距離感になっていたのか。

 

つまりノコルは、「よそ者には心を開かず冷たく疑い深いが、一度心を開くとその人をとことん受け入れてしまう」という性格に加え、「与えられた役割を真面目に忠実にこなそうとするために雰囲気が陰にこもり、周りから見ると近寄りがたく、怖い人、嫌な人間に見えてしまう。性格に遊びや愛嬌がないので、真面目に忠実に責任を果たそうとすればするほど、人から敬遠される」

「鎌倉殿の13人」の義時や梶原景時と同じ系譜の人物像だ。

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ジャビーンの母親と兄妹同然の関係だと判明した時も、「もうひとひねりややこしい背景設定があるかな」と思いきや、「うちの妹」みたいな顔で笑っていたのも良かった。

ベキに対しては「偉大な人」という意識が先行していたが、本来はこの時のように「身内」にはとことん愛情深いのだろう。

 

ストーリー全体で見ると、テント内での憂助の敵対勢力、対置比較されるキャラという損な役回りだった。

ただ憂助との関係性の中でではない、ノコル個人の人物像を見ると「数奇な運命と複雑な背景の割には、性格は真面目で素朴、身内に対して愛情深い普通の人」というギャップが面白いキャラだ。

自分は「一見突飛に見えるが、責任感がある真面目な普通のキャラ」を好きになる傾向がある*1ので、ノコルのようなキャラがとても好きだ。

もう少し詳しく見たかったなあ。

 

*1:ヤンデレとかサイコパス、俺様など、極端な性格傾向のキャラには余り興味を持たない。