MBTIを用いたキャラ語り。
創作の中の話に限定しています。専門家ではないので、雑談程度に聞いてください。
参考文献は記事下に掲載。
この記事には「銀河英雄伝説」「鉄血のオルフェンズ」「うみねこのなく頃に」「ハツハル」の内容が含まれています。
MBTIにおけるINFPとは。
INFP(外向直観を伴った内向感情タイプ)
主機能-内向感情
補助機能-外向直観
第三機能-内向感覚
劣等機能-外向思考
INFPのよく表れる特徴。
理想を求め、自分の中心にある価値観や自分にとって大切な人に忠実である。自分の内面にある価値観と、外で起きていることが一致していることを好む。
好奇心があり、アイデアを実行するのに、促進者の役割をとることが多い。
人を理解したり、可能性を実現する方法を求める。自分の価値観が脅かされない限り、柔軟に受け入れながら適応する。
INFPの本来の姿
自分の内面に核となる価値観を築き、それに基づいて人と関わったり、判断を下したりします。自分のすることに金銭的な価値を超えた目的をもち、自分や他者の成長や、精神面の発達に貢献しようとします。また、自分の価値観を明確にし、それに合った生き方を追求することを、何より優先させます。
周囲の人間が必要とすることを察し、他者本人がそれを認識していなかったり、表現していないときでさえも、その人の情緒的、精神的に必要としていることを察し、大切にします。
(引用元:「MBTIタイプ入門 第6版 -MBTI受検者タイプ検証のためのガイド-」イザベル・ブリックス・マイヤーズ著 園田由紀訳 JPP株式会社)
16分型の中で一番怖いのはINFJだと思う。
創作をMBTIで見ていくと、INFPはハマった人を「生きるか死ぬか」の地点まで連れて行ってしまう恐るべき魅力があることに気づいた。
自分は16分型の中で一番怖いのは、INFJだと思っている。
関連検索でINTJが「恐い」と出てくることが多いが、外向思考は「それが現実で有効に機能するかどうか」に価値基準をおくので、賛成するかしないかはともかく理解はできる。
INTJのキャラは見るからにヤバいタイプが多いので、言っていることは納得できても人がついていかないケースが多い。(本人も大して気にしていない。)「銀河英雄伝説」のオーベルシュタインが典型的だ。
論理で動く場合、有効性や利害がなくなれば人はついていくことをやめるが、感情で動いている場合はどこまでもついていってしまい、時には自分の存在意義ですらそこに託してしまう。INFJが悪役である場合、心酔しているキャラがおり、読み手もその主張に「一理ある」と思う場合が多いのでNTJ系よりも厄介な印象がある。
INFJの主機能内向直観は時間性を超える上に、外向感情でその影響力を波及させる。名が残る宗教家や思想活動家のほとんどはINFJじゃないかと思うのだが、何百年経っても、世界中に自分の活動の影響が残るというのは考えただけですさまじい力だ。
INFPには魔力的な魅力がある。
ということで、今まで「INFJ恐い」と思っていたが、最近、創作の中で見るとINFPもかなり怖いのではと思うようになってきた。
INFJが時代も超える影響力を持つ広範囲型ならば、INFPはピンポイント型だ。
ユングが「静かな水は深い」と評したように、内向感情型は一見目立たない物静かな人間に見えて、ハマった人間をどこまでも深く引きずり込む、恐るべき引力を持っている。
先日読んだ「ハツハル」の登場人物・三崎が、典型的なINFPだった。
恋人の志村が三崎を評した「見た目は基本クールで低燃費系なのに、内側は情熱的でエモーショナル」という言葉はINFPをよく表した言葉だと思う。
志村の父親の反対を乗り越えるエピソードは、INFPの真骨頂だと思う。INFPが思い込むと、あそこまで詰められるのかと恐ろしい。
ベルゲングリューンは、なぜロイエンタールに殉じたのか。
「銀河英雄伝説」のロイエンタールもINFP。
ロイエンタールは、T系の価値観に貫かれている田中世界に迷い込んでしまい、何とか適合して生き抜こうとしているように見える。
大人になってから読むと、ミッターマイヤーとロイエンタールの会話は実務関係以外では余り噛み合っていないように見える。それがロイエンタールにはちょうどいい距離感だったのだろう。
ベルゲングリューンがなぜロイエンタールに殉じたのか、というのもINFPの魔力を表しているように思う。キルヒアイスとロイエンタールの死ぬ順番が逆だったとしたら、ベルゲングリューンはキルヒアイスの死を悼んでも、殉じはしなかったのではと思う。
INFPの内向感情には、客観性や論理、理屈というものがない。
「ロイエンタールがなぜ、ラインハルトに反逆したのか」「なぜ、ラインハルトに説明しにいかなかったのか」という理由には、理屈も論理も、実用性も他人に対する配慮すらない。
自分の中の価値観、美学の問題である。
INFPが自分の中で最も尊ぶ価値観に従うとき、自分が信頼し、大切にしている相手の言葉すら聞き入れない。だからミッターマイヤーが説得しても、テコでも動かない。
「ハツハル」の三崎も志村の説得を受け入れなかったし、後に出てくる「鉄血のオルフェンズ」のマクギリスもガエリオの言葉に耳を貸さない。そして相手の意見に耳を貸さないどころか、自分の考えを説明することすらしない。
他人にその価値観を分かってもらう必要性すら認めない。
INFPの怖いところは、そういう他のタイプが「?」と思うことに命も(自分のはおろか、他人のさえ)賭けてしまうところだ。誰にも分からない、理解されない価値観に殉じることに何のためらいも持たない。
「また、自分の価値観を明確にし、それに合った生き方を追求することを、何より優先させます」
そしてINFPが人と分かち合う必要を認めない、自分だけの価値観に殉じようとする姿勢に、「自分だけはそれが分かる」と思ってしまうと命を捨てるほど共鳴してしまうのだと思う。
ベルゲングリューンはロイエンタールに殉じたというよりは、ロイエンタールが命を賭けた美学に殉じたのだと思う。
「オルフェンズ」のマクギリスと「うみねこ」のヤス。
ロイエンタールとよく似ていると思うのが「鉄血のオルフェンズ」のマクギリス。本当に痛みを伴うことは、心の底から信じた人にしか話せない。
「心の底から信じられるかどうか」を相手を裏切ったり、殺しにかかることで試すというすごい行動に出る。他の人間に成りすましてまでその真意を聞き出そうとするガエリオの行動も、さもありなんと思う。
頭にくる、ショックを受ける以前にワケが分からなすぎる。
女性キャラでは「うみねこのなく頃に」のヤスがINFPではと思う。
境遇自体は気の毒だと思うし、分からないでもない部分もあるのだが、それでも親族、使用人十六人と心中するかしないかの賭けに出る、という発想がすごい。
どこをどうしたらそういう発想に至るのか理解できない。恋をしていないからなのか。
しかしこういう発想をするヤスに、戦人も譲治も朱志香も惚れて、生きるか死ぬか殺すか殺されるかまでハマりこんでいる。
ヤスの心境はよく理解できないが、ヤスを好きになった三人の気持ちは分かる気がする。すごい魔力だ。
INFPの魅力の源泉は「その価値観に命を賭けられるのか?」という問い。
強烈な価値観と情熱を内部に持ちながら、それを外に一切出さないINFPは、彼らに興味を持った人間に「それを分かりたい」と思わせる。
それに共鳴したときに「自分だけは分かる」という特別感を味合わせ、しかもINFPがその相手を選んだ場合、「分かるのだから命も賭けられるはずだよな。自分はこの価値観に命を賭けているのだから」という深みに引きずり込む。
INFPの怖いところは、この発想がナチュラルなところだ。
本人にとっては、「本当にその価値観を信じているならば、命も賭けられるはず」という発想が通常運転なのだ。恐い。
一見クールに見えて、命を賭ける、人生を賭けるという激情に他人を深く引きずり込むことができるINFPは確かに魅力的だ。
選ばれた場合、生きるか死ぬかの関係になると思うが。
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