うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

【読書感想】「チャイルド・オブ・ゴッド」 「ジョーカー」や「アンチマン」よりもラディカルな「社会から孤立し疎外される男の物語」

チャイルド・オブ・ゴッド 作者:コーマック・マッカーシー,黒原 敏行 早川書房 Amazon 主人公のレスターの動向を終始追っている話なので、マッカーシーの小説にしては読みやすい。 マッカーシーの小説の特徴は ①叙景と叙事で成り立っていて叙情がほぼない ②…

【ドラマ感想】「だが、情熱はある」 嫉妬や劣等やドス黒い感情を生む「たりてなさ」こそが自分だから、それでやっていくしかない。

www.saiusaruzzz.com www.saiusaruzzz.com 「だが、情熱はある」が終わってしまった。 今回、若林が夜道で「自分の境遇が自分を取り巻く世界全体のせいのように思えて、何でもいいから怒りをぶつけたくて、もう少し長く目を合わせていたら、確実に殴りかかっ…

「暴君 新左翼・松崎明に支配されたJR秘史」 労働運動の裏面をのぞいて何とも言えない気持ちになる。

暴君~新左翼・松崎明に支配されたJR秘史~ 作者:牧久 小学館 Amazon 「無力な労働者たちが結束して、自分たちを抑圧する権力(会社・経営者)と戦う」 内輪もめや内部分裂や裏切りや労使協調はあっても、労働運動は基本的にはこういうものだと思っていた…

佐藤究のマッカーシーの作品の解説にいいねを百連打したい&「ブラッド・メリディアン」の感想続き。

www.hayakawabooks.com 「それな!」という感想しかなく(失礼)いいねを百個くらい押したい。 特に文章に言及した箇所には共感しかない。 どのページを開いてもおわかりのように、コーマック・マッカーシーは会話にカギ括弧を使わず、地の文に読点をほとん…

コーマック・マッカーシーが亡くなったので、「ブラッド・メリディアン」をもう一回読む。やっぱすげえ。(小波感)

www.hayakawabooks.com 朝イチでコーマック・マッカーシーの訃報を目にした。 もう89歳だったんだな。 一時期Twitterで流行っていた「名刺代わりの小説10選」を作るとしたら、必ず入るのがマッカーシーの「ブラッド・メリディアン」だ。 こんな小説を自分も…

【ドラマ感想】「だが、情熱はある」第九話 あの黒歴史が今の自分を支えている&このドラマが好きすぎて辛い。

ドラマ「だが、情熱はある」オリジナル・サウンドトラック アーティスト:音楽:T字路s バップ Amazon 毎週毎週待ち遠しくて仕方がない「だが、情熱はある」の第九話を見た。 これは二人の物語。 何者かになりたくて、でも何者になればいいのかわからない。 …

「ルポ 特殊詐欺」 なぜ、使い捨てられるとわかっているのに闇バイトに応募してしまうのか。

www3.nhk.or.jp 大学に入学してわずか二か月で、闇バイトに応募して自動車事故でなくなった人の話を読んだ。 この息子さんは高校も成績優秀で、家族仲も父親と二人で外食するくらい良好、この事件を起こすまで問題行動もなかった。 闇バイトによって使い捨て…

読むことが楽しみな面白い本が一冊あれば、けっこう幸せに暮らせる。

いま読んでいる「暴君~新左翼・松崎明に支配されたJR秘史~」がめっちゃ面白い。 暴君~新左翼・松崎明に支配されたJR秘史~ 作者:牧久 小学館 Amazon この時代の労働闘争は、組織内の勢力争い、暗躍に権謀術策、社会に対する考え方や革命に対する路線の…

「語ることができないこと」に意味がある。「隠蔽するための物語」について。

*「隠蔽するための物語」と思われる話についてのネタバレが含まれます。 www.saiusaruzzz.com 「一方通行の家」が自分にとって面白かった理由である「隠蔽するための物語」(造語)について話したい。 「隠蔽するための物語」とは何かは、以前↓のnoteに書い…

【漫画感想】「一方通行の家」は、「隠蔽するための物語」として抜群の出来だった。

一方通行の家 - 屋嘉壱 | 少年ジャンプ+ 今朝、読んだ「一方通行の家」がめっちゃ面白かった。 *以下ネタバレ注意(未読の人は、上のリンクから先に本編を読むことをおすすめします。) 明確に「おかしい」とは言えないが、奇妙な違和感がある。 この漫画…

「宗教は物語で、哲学は言語ゲーム」 竹田青嗣が語る「宗教と哲学の違い」がわかりやすくて面白かった。

竹田教授の哲学講義21講―21世紀を読み解く 作者:竹田 青嗣 みやび出版 Amazon 個々の人物の思想の説明もわかりやすく面白かったけれど、それ以上に「哲学を読む時にどういう角度で読むべきか」「哲学とはそもそも何なのか」という話が面白かった。 その中で…

「人間は流行り病だ。そばにいるものから毒していく」 名作と名高い「天使の詩Ⅰ・Ⅱ」をもう一度プレイしたい。

突然、「天使の詩」のことを思い出して猛烈にプレイしたくなっている。 子供のころ、ⅠもⅡ(堕天使の選択)もプレイしたはずなんだけれど(ストーリーやムービーを見たことは覚えているし)ゲーム自体は頭から吹き飛んでいる。 Ⅰのエンディングは子供心に多大…

「帝銀事件と松本清張 74年目の真実」の感想 「事実」は多勢の認識によって作られているものに過ぎないのかもしれない。

年末に見逃した「帝銀事件と松本清張」が、たまたまテレビをつけたら放映していたので視聴。見たのは第二部のドキュメンタリー部分。 www.nhk.or.jp 結局「帝銀事件」の真相は未だに分かっていない。 731部隊の人間が、秘密兵器の実験を行っていた登戸研究所…