うさるの厨二病な読書日記

厨二の着ぐるみが、本や漫画、ゲーム、ドラマなどについて好き勝手に語るブログ。

漫画

「信頼のできない語り手」と「信頼のできない視点」についての雑談

先日見た「かまいたちの夜」の解説動画の中で、「『かまいたちの夜』は選択肢を間違うと、主人公がプレイヤーにとって『信頼のできない語り手』に変貌する」という考えが述べられていて面白いなと思った。 「信頼のできない語り手」は何か作為があったり、も…

【漫画感想】モリエサトシ「私の正しいお兄ちゃん」は「面白くない」ところにすごさがある。

*ネタバレしています。 私の正しいお兄ちゃん(1) (BE・LOVEコミックス) 作者:モリエサトシ 発売日: 2019/04/12 メディア: Kindle版 モリエサトシ「私の正しいお兄ちゃん」全四巻を読んだ。 最初に読んだときは色々と引っかかる部分があって、否定的な感…

【漫画感想】高橋ツトム「残響」 乾いた非情な世界に家族愛を浮かび上がらせる「画の力」

[まとめ買い] 残響(ビッグコミックススペシャル) 作者:高橋ツトム メディア: Kindle版 「残響」はストーリーやセリフを極限まで切り詰めることで、絵(演出含む)の力でどこまで伝えられるかを挑戦しているように見える。 高橋ツトムの絵は元々大好きだが…

【漫画感想】藤本タツキ「チェンソーマン」を読んで考えてしまうとちょっと辛いので、考えないことにした。

チェンソーマン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:藤本タツキ 発売日: 2019/03/04 メディア: Kindle版 増田で盛り上がっていたので読みだしたら止まらなくなり、既刊7巻までいっき読みした。 話も面白いし、何よりバトルシーンがカッコよく、デンジがチ…

【「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」キャラ語り】バランが嫌いだったのは、どこまでも「父親」だったからなのかもしれない。

www.saiusaruzzz.com アルガスを含め男キャラの場合は「なぜそんなことをするのか」という経緯の説明(共感措置)も省かれていることが多い。 訳もなく人を傷つけ貶める嫌な奴として描かれ「何という哀しい笑い声や…」と言ってくれる人も現れない。 前回の記…

【「かぐや様は告らせたい」キャラ語り】子安つばめ先輩に見る「私の価値の耐えられない軽さ女子」の闇。

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」の16巻の石上とつばめ先輩のエピソードが、読んでいてぞわぞわしたのでちょっと考えを整理したい。 かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 16 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) 作者:赤坂アカ 発…

【映画感想】「翔んで埼玉」に見る「埼玉県民は埼玉を知らない」というリアリティ

翔んで埼玉 発売日: 2019/09/11 メディア: Prime Video 面白かった。 無茶苦茶なコメディか、と思いきや、意外と王道のストーリー展開だった。 麗の配役にGACKTを思いついた人は天才だと思う。 一番笑ったのは流山で対峙した千葉の軍勢の中に、チーバくんと…

武田すん「グレイプニル」に見る、自分の好きなストーリー展開のパターン4つ。

「グレイプニル」既刊8巻までを読んだ。 [まとめ買い] グレイプニル 作者:武田すん メディア: Kindle版 ストーリーはよくある異能バトルものだが、絵柄、キャラクター、展開がとにかく好みだ。 最初はドストライクキャラである、目つきが悪いそばかすっ娘、…

「気持ち悪い」を巡る話は、理解を(一方的に)求めないものがいい。

よく似た話(自分の中で)を二作続けて読んだ。 [まとめ買い] あげくの果てのカノン 作者:米代恭 メディア: Kindle版 少女巡礼(1) (サイコミ) 作者:にしお 栞 発売日: 2019/01/30 メディア: コミック 二作とも面白かったので、「面白い漫画が読みたい」と思…

「金田一少年の事件簿File2 異人館村殺人事件」を読んで、自分の「そういうもんだライン」について考える。

*この記事は、「金田一少年の事件簿File2 異人館村殺人事件」の犯人を含むネタバレが含まれています。未読のかたはご注意ください。 「金田一少年の事件簿」がFile3まで無料になっていたので、久しぶりにfile2「異人館村殺人事件」を読んでみた。 金田一…

【漫画感想】ろびこ「僕と君の大切な話」 主語デカい話からたった一人の「僕と君」になる。

*ネタバレあります。 「僕と君の大切な話」が全七巻で完結した。 僕と君の大切な話(7) (デザートコミックス) 作者:ろびこ 発売日: 2020/03/13 メディア: Kindle版 だらだら続くよりは、東くんと相沢さんがめでたくカップルになったところで終わってよか…

【漫画感想】藤村真理「少女少年学級団」子供たちの描写が魅力的だからこその贅沢な不満。

余りの面白さに、全9巻大人買いしていっき読みしてしまった。 [まとめ買い] 少女少年学級団 作者:藤村真理 メディア: Kindle版 どこかで見たことがある絵だと思ったら、「きょうは会社休みます。」と同じ作者だった。 連載時期がかぶっているんだけど、二作…

作品を解体して考える。新海作品の大地は丸く、思考しているのか。

「レヴィ=ストロース入門」を読んだ。 レヴィ=ストロース入門 (ちくま新書) 作者:小田亮 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2013/11/08 メディア: Kindle版 レヴィ=ストロースの思想や業績がわかりやすくまとめられている。 「神話論理」で書かれている…

【漫画感想】「シグナル100」に見る、デスゲームというジャンルの難しさ。

*ネタバレしています。 橋本環奈主演で映画化が決定した「シグナル100」を読んだ。 全四巻でサクッと読める。 [まとめ買い] シグナル100 メディア: Kindle版 学級崩壊したクラスで「下僕」としてバカにされ続けていた担任が、生徒たちに後催眠をかけて生き…

【漫画感想】「カリスマ」は、予想していたのとは違うテーマで面白く読めた。

[まとめ買い] カリスマ(アクションコミックス) メディア: Kindle版 *ネタバレしています。 内容は予想通りだったけれど、力点の置かれ方がぜんぜん違っていた。 「なぜ、外から見ると異様とも思える組織に、人が心酔してしまうのか」 「こういう組織の中…

【漫画感想】東元俊哉「テセウスの船」10巻完結。家族愛をテーマにしたヒューマンドラマとしてよかった。

「テセウスの船」が全10巻で完結した。 テセウスの船(10) (モーニング KC) 作者:東元 俊哉 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/12/23 メディア: コミック これも「モンキーピーク」と同じだった。 期待値の高さと期待の方向性が、ちょっと食い違ってしま…

「物分かりいい症候群との戦い」としての「進撃の巨人」を語りたい。

www.saiusaruzzz.com この記事の続き。 上の記事で「『進撃の巨人』は世界に対する怒りそのものと感じる」と書いた。 根底にあるその怒りのエネルギーがずっと持続しているところが、「進撃の巨人」のすごいところだ。怒りが払しょくされていく話なのかと思…

【漫画感想】諌山創「進撃の巨人」30巻 理想という欺瞞に満ちた世界への怒り

「進撃の巨人30巻」を読んだ。 かなり衝撃を受けていて、モヤモヤをそのまま語るのであまりまとまっていない。 モヤモヤしたまま語りたい。 進撃の巨人(30) (週刊少年マガジンコミックス) 作者:諫山創 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/12/09 メデ…

女の子の力を信じて応援する「荒ぶる季節の乙女どもよ。」が素晴らしかった。

荒ぶる季節の乙女どもよ。DVD 第四巻 出版社/メーカー: DMM pictures 発売日: 2019/12/27 メディア: DVD この商品を含むブログを見る アニメ「荒ぶる季節の乙女どもよ。」がよかった。 「異性相手では物理的には受容的にならざるえない女性が、性的に主体的…

漫画版「十角館の殺人」1巻が発売。読んでみたら、やっぱり面白い。

「十角館の殺人」が漫画になっていた。 TwitterのTLで綾辻行人が「漫画版『十角館の殺人』の一巻が発売されました」とつぶやいていたのを見かけたので、さっそく購入して読んでみた。 十角館の殺人(1) (アフタヌーンコミックス) 作者: 綾辻行人 出版社/メ…

MBTIのタイプにおける典型的なキャラとそれについての雑談(その2)

www.saiusaruzzz.com 前に書いたこの記事の続き、というか補足。 記事を書いたあとに思いついたことやキャラについて。 *創作の中の話に限定しています。書いてあることはすべて個人的な考えです。専門家ではないので、雑談程度に読んでください。 NTJ世界…

【漫画感想】「モンキーピーク」とは何だったのか。

「モンキーピーク」が全12巻で完結した。 モンキーピーク 12 作者: 志名坂高次,粂田晃宏 出版社/メーカー: 日本文芸社 発売日: 2019/10/18 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 想像以上にやっつけな終わり方だった。 内容のつじつまやキャラの掘…

【漫画感想】三田紀房「インベスターZ」のストーリーと「天才とは何なのか」について思ったこと。

「インベスターZ」全21巻を読み終わった。 [まとめ買い] インベスターZ 作者: 三田紀房 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 編によっては、知識やうんちくを語ることがメインになっている。後半になればなるほどその傾向が強くなるので、語られ…

【MBTIを用いてキャラ語り】創作における内向感情型について INFP(ロイエンタール)対ISFP(尾形)

MBTIを用いたキャラ語り。 *創作の中の話に限定しています。専門家ではないので、雑談程度に聞いてください。 参考文献は記事末尾に掲載。 内向感情を主機能として使うINFPとISFPのキャラについての、個人的な考え。 内向感情型のひとには、「静かな水は深…

乃木坂太郎「第3のギデオン」は、「息子が父親になるまでの話」として名作。

前々から読みたいと思っていた乃木坂太郎の「第3のギデオン」が三巻まで無料になっていたので、全巻購入して読んでみた。 [まとめ買い] 第3のギデオン 作者: 乃木坂太郎 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る ずっと前から読みたいと思っていたが…

「人目につかぬよう、勇作殿を裏からお見送りしろ」を当たり前と思うかどうかで見方が変わるのが、物語を読む面白さ。

www.saiusaruzzz.com この話の続き、というか補足。 尾形に対しての見方が変わるまでの過程のメモだ。 前回に引き続き、11巻と17巻の尾形の過去のエピソードがメインの話になっている。 最初に尾形が↑の記事のような人では、と思ったのは17巻を読んだときだ…

誰かが「災厄」になることを食いとめる「家族という関係性が病んでいる」という考えかた

www.saiusaruzzz.com 前回、「ゴールデンカムイ」の尾形は、アダルトチルドレンの類型のひとつであるスケープゴートではないか、という記事を書いた。「今の時点では自分にはそう読める」というその解釈に基づいて、今回の記事を書いている。 尾形は気の毒…

【「ゴールデンカムイ」キャラ語り】尾形百之助のスケープゴート感が、読んでいてしんどい。

Amazonプライムビデオで「ゴールデンカムイ」のアニメを見ている。 ウェンカムイ 発売日: 2018/07/14 メディア: Prime Video この商品を含むブログを見る 原作の11巻と17巻に載っている尾形の過去のエピソードを読み返したら、やたらしんどく感じた。 初読の…

東元俊哉「テセウスの船」八巻までの感想。もうすぐ最終回&ドラマ化おめでとう。

テセウスの船(8) (モーニングコミックス) 作者: 東元俊哉 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/06/21 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 6月21日に「テセウスの船」の第八巻が発売した。 27日発売の本誌で最終回のようだ。 八巻で「加藤…

「相手にも自分と同じクズでいて欲しい」気持ちを描いた、樹なつみ「パッション・パレード」の神回。

www.saiusaruzzz.com 「蟻の棲み家」は「分断する自分」への無頓着さが気になり、自分の中でかなり評価が低い。ただ感想記事でも紹介した 「安易な区分けは不当に誰かを貶める危険がある。そして不当に貶められた人たちは誇りを叩き壊されて、規範意識を持て…